OUTSIDE IN TOKYO
Jean-Pierre Jeunet Interview

ジャン=ピエール・ジュネ『ミックマック』インタヴュー

4. テリー・ギリアム、ティム・バートンと僕の共通項は現実を変質させるのが好きなところ

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OIT:今の同時代であなたが共感、リスペクトできる人たちはいますか?
JPJ:フランスではジャック・オディアールが好きだね。『アンプロフェット』はいい。
ヤン・クーネンもいいし、ジャン=ジャック・アノーもいい監督だ。セドリック・クラピッシュもいいね。フランスだとそんな感じかな。アメリカとなればたくさんいるよ!日本の監督はあまり知らないけど、でも今日、フォトグラファーの蜷川実花と会う予定だ。彼女の映画はDVDで見たけど、とても素晴らしかったよ。

OIT:では、テリー・ギリアムのような人は?
JPJ:うん、彼はいい友達だ。僕らは世界の見方がわりと似ている。現実を変質させるのが好きなところも。ティム・バートンもそう。共通項は、アニメーション畑の出身だということ。そこが理由かもね。アニメーションでは想像力で全てをコントロールしたいわけだ。世界を特別な視点で見ている。

OIT:それに手づくり感覚もありますね。
JPJ:そうだね。世界への視点があるというのは特徴だ。10秒ですぐに分かる。デヴィッド・リンチ、エミール・クストリッツァ、ずっと前なら黒澤明、フェリーニ、キューブリックもいた。そういう監督だとすぐにスタイルを認識できる。

OIT:好奇心から聞くけど、例えば、テリー・ギリアムのような監督と自分の違いはどんなところがありますか?
JPJ:僕がやろうとするのは、まあ、それはやろうとしているという意味で、できているかは分からないけど、僕はより人間的にしたいと思っている。フランク・キャプラが前によく言っていたように、「人よりおもしろいのは人である」ということ。僕は人の近くにいたい。それは簡単なことではない。もちろん、映像的におもしろくて、おかしいものを作りたいと思う誘惑に駆られることもある。テリー・ギリアムもたまにそういうことをやっている。人間性を追いかけるという意味で。

OIT:ティム・バートンは?
JPJ:ティム・バートンも同じさ。映像的にとても上手いし、おもしろい。僕が彼を近いと感じるのは、初期の頃に似たような映画を作っていたからだ。でも僕の方が、才能が足りなかった。僕のショートフィルムはティム・バートンと比べると、ひどいもんだ(笑)。

OIT:玩具箱が枯渇したということだけど、新しい映画をもう作れないのではないかという不安に駆られることはありますか?
JPJ:仕事をする時はいい状態でいたいと思う。ただ、映画を作るためだけに作りたくはない。そこには愛がなければいけない。だからもしいい物語が見つからなければ、撮らないだろう(笑)。それで映画館を開くかもしれない(笑)。それかピッツェリアを開くかも(笑)。

OIT:実際にアニメーション映画を作る気はありますか?
JPJ:うん、アニメーションには興味あるよ。とてもいい監督とオーストラリアで会ってね、名前はアダム・エリオットで、『Mary and Max』という作品を撮っている。もし見ていなかったら、絶対に見た方がいい傑作だ。とてもダークで美しい。短編のアイデアが素晴らしいし、いい監督だ。『Harvie Krumpet』というショートでオスカーも受賞している。絶対に見てほしいね。そして彼をサポートして、アニメーションのプロデュースをしたいと思っている。でも僕自身はやらない。はっきりと、どれだけ長い作業になるか分かってるからね(笑)。長いプロセスだし、僕は役者が好きすぎる。

OIT:リアルな役者を使って撮影することの方があなたにとっては楽、いや、自然なことということですね。
JPJ:まあ、違う作業ってことだね。役者との関係性が好きだ。直接話したり、外のロケハンも。

OIT:何が映画をいい映画たらしめますか?
JPJ:一にいい物語、二にいい物語、三にいい物語(笑)。

OIT:常にいい物語が先にくると。
JPJ:まあ、僕個人では、いい物語と強いスタイルかな。でも映画史の中で残る映画というのは、美的に興味深い作品だと思う。批評家が『市民ケーン』が傑作だという時、とても細かく、美しくて、完璧だからだ。

OIT:あと、この映画では政治的な要素も取り上げていますね?
JPJ:政治的なことは話したくないんだよね。

OIT:まあ、しなくてもいいけど、政治的な要素が入ってきた理由は?
JPJ:このテーマは、もう長いこと僕の頭の中にあったことなんだ。そうした人間たちについて話したらおもしろいと思った。実人生ではもちろんいい人間かもしれないし、僕も実際に会ったから、彼らがいい人だというのも分かる。情熱を持ったいい人間だ。でも彼らはその情熱を、人を殺すために使っているんだ。それは興味深いパラドックスだと思うんだ。だからそれについて言及したかったんだ。

OIT:では、政治的なステートメントというわけではないんですね。
JPJ:タイプが違うだけだ。武器を売るのは悪いことじゃないと言うのは、あまりにクリシェすぎる。政治的なステートメントをこめるのが上手な監督もいる。例えば、コスタ・ガヴラスのように。でも僕の好きな領域ではない。ある人たちは人生を切り取り例えば、アルフレッド・ヒッチコックは言った。「人生を切り取るように映画を作る人もいるが、私はケーキを切り分けただけだ」と。僕はまさにそれをやっているんだ(笑)。

OIT:コスタ・ガヴラスの名前が出たところで、あなた自身はアーカイヴに拘る傾向がある方だと思う?情報、日記を集めたり。
JPJ:40年代フランスのマルセル・カルネの映画を集めて持っている。詩人のジャック・プレヴェールと仕事をしてきた人だ。そしてプロダクション・デザイナーによるオリジナルのペインティングも収集している。時々、シネマテークのミュージアムに貸し出したりしている。あとは写真や、オリジナルの脚本とかも持っているよ。



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