OUTSIDE IN TOKYO
Jean-Stephane Sauvaire INTERVIEW

ジャン=ステファーヌ・ソヴェール『ジョニー・マッド・ドッグ』インタヴュー

3. キューブリックやパゾリーニに影響を受けた

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OUTSIDE IN TOKYO:監督の作品を見るのはこれが初めてですが、ここからはどんな方向へ向かうのでしょう?
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:どうだろう(笑)。まず、『ジョニー・マッド・ドッグ』に5年を費やしたからね。リベリアに2年滞在し、そのあと編集作業があり、かなり集中して仕事する時期だった。だからリベリアの後に何をするか…、ひとつ考えられるのは、全く場所を変え、ニューヨークのような所で、4人の登場人物が部屋に閉じ込められ、他人が入ってこられない状況で起きる話かな。この映画とは全く違う話を撮りたいと思って準備しているところだけど、もっといかにも映画的な枠組みで撮ることになるかな。更に実験映画的な試みもしたい。どう実験的かと言うと、より観客に映画の中へ入り込んでもらうにはどういう撮り方があるのか考えながら撮っていこうと思う。それが次の計画だね。そしてその計画が終わったらもう少し政治的というか、ヒューマン・ドラマというか、人が冒険をしていく話になると思う。僕自身、映画として撮りたいテーマが、人に知らないことを知ってもらえるような、ある意味、これまでにないことを体験するようなものだ。単純に、いわゆる冒険という意味の冒険ではなく、これまで知らなかったことに人が進めるという、広い意味での冒険的な映画を撮るのが好きだから。例えば、今回東京に来て街を歩いてみて、東京の人を撮ってみたいともすごく思った。東京はおもしろい映画になるだろうし、やってみたいという情熱を感じたのでそれもおもしろいと思うね。

OUTSIDE IN TOKYO:ぜひ見たいですねー。
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:(笑)東京の若者にとても興味があるんだ。なぜかと言うと、変わった格好をした子供たち、ちょっとおかしく装ってる若者たちがいるよね。少し変わった格好をするのが好きなんだ。僕自身、子供の頃、サーカスにいた頃があるから。

OUTSIDE IN TOKYO:それは素晴らしい!
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:(笑)そこには自分らしい自分と、衣装を着た時の、ふだんの自分とは違う自分との対峙がある。そういうことを体験するのが好きだから、日本でも、例えば、ある世代がいつもの自分と違う格好をすることがあるように、ちょうど『ジョニー・マッドドッグ』の中でもいつも以上に変な衣装を身に着けることで、ふだんの自分と違う自分になれる。そういう関係性にすごく興味があって、東京でそんな映画が撮れたらいいだろうな。

OUTSIDE IN TOKYO:ところで、ギャスパー・ノエの名前を見かけましたが(助監督をしていた)?
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:ああ、それは問題だ(笑)。

OUTSIDE IN TOKYO:まあ、よく聞かれると思うので、いやならいいんですけど。僕が聞きたかったのは、あなたを作ってきた映画はどんなものだったかということですから。
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:まあ、(さっきの話だけど)ギャスパーが既に東京で映画を撮ってしまった(5月公開の東京が舞台の新作『エンター・ザ・ボイド』)ので、ひとつ関門ができてしまい、ここから先は、というリミットみたいな感じで「ギャスパーは問題だ」と言っただけだよ(笑)。

OUTSIDE IN TOKYO:その撮影時(2009)には助監督で来日してないんですよね?
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:僕が仕事したのは彼の最初の長編作品『カノン』だよ。この映画も同じように、ドキュメンタリーとフィクションが一緒になったドキュドラマのように、観客が感情移入するような枠組みになっているけどね。とにかくギャスパーは、映画の撮り方、フォルムに拘っている映画作家であり、映画の強さというか、強度があると思う。だからそのふたつの点で、観客としても、ギャスパーの作品はとても評価してるし、大好きだ。

OUTSIDE IN TOKYO:ではついでに、ギャスパーについてもっと聞いてもいいですか(笑)?
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:(笑)いいよ。ギャスパー自身は無口であまり語らないと思うけど。

OUTSIDE IN TOKYO:では、強烈な体験故に、ギャスパー(との経験から)から引き継いでしまったけど、自分の中で(今は)排除したいものってありますか?自分の映画を作る上で邪魔になるものとか?
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:(笑)むずかしい質問なのでどう答えていいか迷うね。ジェネレーションとしても、ほとんど同じ世代に属しているので答えにくいけど、僕はギャスパーの映画そのものは好きだし、同時に、僕の人柄、ギャスパーの人柄、個性は全く違うし、その違い故に、撮る映画も自動的に違うものになってしまう。扱うテーマも違うので、初めから違う映画になってしまうと思うんだ。なので(影響を受けた)映画を挙げるなら、ギャスパーというより、もっと前の映画作家に影響されていると思う。例えばスタンリー・キューブリックとかパゾリーニとか。

OUTSIDE IN TOKYO:特に他意はなかったんですけどね。皮肉でもないです(笑)。
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール:(笑)いやー、どう答えていいか焦ったよ!

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