OUTSIDE IN TOKYO
JERZY SKOLIMOWSKI INTERVIEW

イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー

2. 我々の気付かないところで、警戒信号は発せられているのかもしれない

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OIT:その悪夢は、この作品に出て来る“黒い点”と関係していますか?
イエジー・スコリモフスキ:いや、そういうことではないな、黒い夢というのは、この悪夢のような、悲劇的な結末全体を指している。それは、悲劇的な出来事が連鎖状に続いて起きることによる、世界崩壊の夢だった。

OIT:監督は、自らの映画の原体験として、フィルムに残っている傷にとても魅了されたということを、7年前のインタヴューで語ってくれたのですが、その映画の原体験と“黒い点”は何か関係があるのでしょうか?
イエジー・スコリモフスキ:もしかすると、意識下では関係があったかもしれないが、何か悪い事が起きるという不吉な象徴を探したかった。それが私のねらいだった。

OIT:この映画には、とても謎めいた、暗喩に満ちたシーンが幾つもあります。例えば、救急隊員が、アパートメントに入って行くシーンで、壁の割れ目を、液体が遡って行くという描写があります。
イエジー・スコリモフスキ:我々が気付かないけれども、何か説明し難い不思議な現象が我々の周りで起きている。もしかするとそれは、我々に対して“伝達”はされているけれども気がついていない、警戒信号であると考えることは出来るかもしれない。

OIT:それは、人間の理解を超えた自然であるとか、目には見えない、知覚を超えるようなものなのでしょうか?人間の無意識に働きかけるような。
イエジー・スコリモフスキ:そうだ。

OIT:今作も、音の使い方がとても刺激的で面白かったです。サウンドトラックのCDが欲しいと思ったくらいですが、飛行機の音、鐘の音、街のノイズなどの様々な音響、ストリートで演奏をするバンドのサウンドなど、様々な音が作り込まれています。
イエジー・スコリモフスキ:そうした一連の音を私は敢えて誇張したんだ。そうした不安、威嚇、脅威の雰囲気といったものが、最終的にカタストロフィに向かって映画を導いて行くわけだが、その雰囲気を作るために音を誇張したんだ。

OIT:そうした音作りを含めて、作品の作りが、『アンナと過ごした4日間』(08)や『エッセンシャル・キリング』(10)よりも更に、緻密に計画されて練り上げられているという印象を受けました。今作では事前の準備がかなり大変だったのではないでしょうか?
イエジー・スコリモフスキ:その通りだ。まず、シナリオを書くのに今までの作品よりも時間が掛かっているし、編集の作業も今までの作品より時間が掛かっている。


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