OUTSIDE IN TOKYO
JERZY SKOLIMOWSKI INTERVIEW

イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー

5. 一種の警戒信号を発するような気持ちで、この映画を作った

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OIT:使われている音楽について教えてください。ひとつは、ストリートで演奏しているバンドについて。このバンドの音楽は、エンディングの背景でずっと流れていますね。もうひとつは、「母よ、5時までは寝ていられる」とアカペラで歌われる曲についてです。
イエジー・スコリモフスキ:この映画の主要な音楽を書いたのは、ポーランドの有名な作曲家でパヴェウ・ムィキェティンという人物だけれども、そのバンドの曲も、「母よ」の方も彼が書いた曲ではなくて、「オルガーニック」というポーランドの若いアーティストが書いた曲なんだ。

OIT:映画は、5時から5時11分の間の出来事を描いていますから、5時までは寝ていられるという言葉で予兆を表現していますね。
イエジー・スコリモフスキ:何か危険なことが起きるのが5時であると、その時間に誰か人がやってきて扉を破る、そういう事が起きるかもしれない、危険が待ち構えているということを伝えているわけだね。さらに、5時に、お前のところにくるぞと、お前のところに扉を破って入って来るぞ、と言っているわけだ、その人間はお前を殺そうとしていると警告しているのかもしれない。

OIT:“11”という数字や、“5”という数字に特別な意味はあるのでしょうか?
イエジー・スコリモフスキ:この映画は、10人程の人物に起きた出来事を描いている、その為の時間に相応しいのは、大体10分前後ではないか、ということをまずは考えたんだ。そこで、10分でも、12分でも、13分でも構わないんだけれども、あまりくっきりと区切りが良い数字であるとか、あるいは、何か象徴的な意味を持ちすぎる数字は避けたかった。つまり、中性的な、ニュートラルな数字として“11”を選んだ、そしてもうひとつ、“11”というのはグラフィカルで美しい数字だからね。

OIT:このポスターのグラフィックスを作るのには、監督も関わっているのですか?
イエジー・スコリモフスキ:これを作ったのは、ポーランドで現在、一番有名な画家ヴィルヘルム・サスナルだ。彼が描いた画なんだ。私が直接彼に依頼して、映画を見た後に、描いてもらったんだよ。

OIT:この“手”のアイディアは、サスナルが出して来たものですか?それとも、監督のアイディアだったのでしょうか?
イエジー・スコリモフスキ:サスナルのアイディアだ。

OIT:崩壊しつつある世界を繋げ止めようとしているようにも見えますが。
イエジー・スコリモフスキ:あるいは、首を締めているのかもしれない。ひょっとすると、死の前の11分間ということを意味しているのかもしれない。

OIT:インターネットやスマートフォンの登場によって、現代人の生活がより断片化してきています。この映画にも現代社会のそうした側面が描かれていたように思いましたが、そうした意図はありましたか?
イエジー・スコリモフスキ:というよりも私としては、世界全体の崩壊といったような事態が、私たちに、一瞬の内に襲いかかるのかもしれないという不安、そして、そういった事態から人間を守りたいという、一種の警戒信号を発するような気持ちで、この映画を作ったということは言えるかもしれない。


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