OUTSIDE IN TOKYO
JOSHUA SAFDIE INTERVIEW

ジョシュア・サフディ『神様なんかくそくらえ』インタヴュー

3. 冨田勲の音楽を言語として使いたかった

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OIT:撮影監督のショーン・ブライス・ウイリアムズとはとても感覚が近いということですが、弟のベニーさんとは?
ジョシュア・サフディ:彼は撮影には関わらなくて、サウンド担当なんだけど、この作品では、彼は皆の声を聴くことができたんだ。彼は、僕が演出している声を聞こえるし、僕は彼の声が聞こえるから、僕たちの声を聞いていた彼が、あれを忘れるなよ、って言って、僕が、そうだ、それやらなきゃって言ったりする、つまり、二つの脳が同じ体の中で同時に動いているみたいな感じはあったね。とはいえ、議論になることもあって、ケイレブっていうのは、かなりワイルドな奴だから、たまに演出で揉めることがあるんだ。そういう時にベニーが、こうしたらいいんじゃない、って口出ししてくることがあって、そんな時は、おまえ黙れよって言うしかない、まあ兄弟ならではのやりとりっていうか。

OIT:冨田勲の音楽を使おうと決めたのは、どの段階でしたか?
ジョシュア・サフディ:冨田の音楽を私に紹介してくれたのは、脚本を共同執筆をしたロナルド・ブラウンシュタインなんだけど、一緒に書いている時から、冨田の音楽を使うのもアリだねという話をしていたんだ。その後、ロナルドと編集の作業も一緒にやったんだけど、絶対に彼の音楽を使おうってことを決めたその時点だった。中でも「Snowflakes are Dancing」は絶対に使いたいと思ったね。ロマンティックな音楽が欲しいと思ってたんだけど、例えば、オリジナルのドビュッシューの曲のように伝統的なものではなくて、もっとSFタッチな感じのものが欲しかった。だから、冨田勲の音楽のロマンティックな解釈というのは、まさにこの映画にぴったりだって思ったんだ。

OIT:オープニングタイトルのアリエルが精神病院に入れられてしまうシーンで、冨田の音楽が流れますが、映画全般に渡って彼の音楽を使おうと思ったのでしょうか、あるいは、特定のシーンを想定して使おうと思ったのでしょうか?
ジョシュア・サフディ:実は、そのシーンは冨田ではなくて、ポール・グリムシュタットというニューヨークのミュージシャンが作ったものなんだ。でも、冨田のスタイルを使っている。冨田の音楽を言語として使いたかったから、冨田のオリジナルの音楽もかなり使ってはいるけれども、部分的にその言語に従って、他のアーティストに作ってもらったものもあるんだ。

OIT:ということは、特定のシーンで冨田勲の音楽を使うというよりは、映画全体に冨田の音楽のトーンが欲しかったと。
ジョシュア・サフディ:そうだね、冨田勲の音楽のフィーリング、ノリが欲しかった。

OIT:他のものは考えていなかった?
ジョシュア・サファディ:あとは、アリエル・ピンクなんだけど、彼が作った2時間分の音楽があるんだけど、結局使わなかったんだよね(笑)、エンドクレジットで1曲使っただけで。彼は5曲、楽曲を作ってくれて、その他にもクラシカルなスコアも書いてくれたんだけどね。

OIT:サウンド面は、弟のベニーさんの担当ということですが、音の録音はどのように行われましたか?機会を改めて、わざわざ音だけを録りにいく、というようなこともしましたか?
ジョシュア・サフディ:サウンドデザインは凄く凝ってるんだ。同時録音もしてるけど、後から沢山付け加えていて、ベニーのあだ名がベニー・“スペクター”っていうんだよ(笑)、あの“ウォール・オブ・サウンド”のフィル・スペクターにちなんでね。彼は、『ターミネーター』(84)を凄く研究してるんだけど、あの映画では、ひとつの音に13種類の音が使われている。聴いても気がつかないような微細なものまで、沢山の音が使われてるんだけど、ベニーはそういうのが好きで、そのスタイルでやってるんだよね。

OIT:ベニーさんがサウンドのミキシングもしたと。
ジョシュア・サファディ:そうだね、ミキシングと音の採録も、すべて彼一人でやったんだ。彼は、サウンドデザインのマスターだよ。次の作品では、ベニーにアシスタントが付く予定なんだ、ブーム・マイクを2本使おうと思ってるから。

OIT:キャメラは何台使いましたか?
ジョシュア・サファディ:この作品では70~80%が2台のキャメラ、残りが1台だね。



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