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2014年の東京国際映画祭のコンペティションでグランプリと最優秀監督賞をW受賞した『神様なんかくそくらえ』が、約1年を経た今、日本で劇場公開されている。『神様なんかくそくらえ』は、本作の主演女優を務めることになるアリエル・ホームズの手記にインスパイアされたジョシュアとベニーのサフディ兄弟が、ロナルド・ブロンスタインとともに脚本を書き上げ、ニューヨークのストリートに生きるハーリー(アリエル・ホームズ)とイリヤ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の破滅的な恋愛の行方を鮮烈に描き出した。
好きな男への一途な恋心を募らせる麻薬中毒の少女の手記に基づいた本作は、実際にニューヨークのストリートで生活する若者たちをキャストに迎えることでリアリズムを貫きながらも、21世紀の“望遠レンズを使ったオペラ”として、ファンタスティックな妙味すら醸し出し、自堕落に自らの身を滅ぼす姿を赤裸々に描くばかりのスキャンダリズムとは一線を画した鮮烈な作品に仕上がっている。
本作の劇場公開のプロモーションのために来日したジョシュア・サフディに、兄弟を映画作りに向かわせたきっかけから、この映画を成立させている独自のスタイルや冨田勲の音楽、撮影監督ショーン・ブライス・ウイリアムズのこと、そして、準備中の次作の話まで、ざっくばらんに話を伺う機会を得た。ジョン・カサヴェテスやフレデリック・ワイズマンを敬愛する、ニューヨークの骨太な才能に、これからも是非とも注目していきたい。
1. 自分の今までの人生は、映画によっていつも救われてきた |
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![]() OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):『神様なんかくそくらえ』は、ニューヨークのストリートのハードコアな物語を、リアリズムの演出でぐんぐん押していきつつ、その先に、ファンタスティックなシーンが現れるという展開にとても新鮮な驚きを覚えました。冨田勲の音楽の使い方もとてもユニークでした。最初に、あなたが映画を作り始めたきっかけを教えてもらえますか? ジョシュア・サフディ:僕と弟(ベニー)が子どもの頃、父親がボーナスで8ミリビデオを買ったんだけど、彼はそれでいつも僕らのこと撮影していた。僕らがただファイルをいじっているだけの場面さえもね、本当に何でも撮っていたんだ。子どもの頃に、そんな風に撮影ばかりしている父親を見ると、一体、このビデオキャメラの何がそんなに特別なんだろう?って”内省”するようになる。思い返してみると、それが”内省”の始まりなんだけど、それって映画そのものだよね、つまり自分たちの行為を振り返る、”内省”をすることの種が、その時に撒かれたんだと思う。その後、当然の如く、僕ら兄弟は、父親の隙をみてビデオを盗んで、小さい映画を作るんだけど、作るのは、いつもフェイク・ドキュメンタリーだったんだよね。不思議なことに、決してファンタジー的なものではなくて、初めから嘘のドキュメンタリーっぽいものを作っていた。それから、ティーンエイジャーの頃は、地元が荒れてたから、結構ラフな時代を過ごして、兄弟の仲もあまり良くなかったんだけど、映画を撮るようになって、また兄弟の仲がまた良くなってきた。だから、自分の今までの人生は、映画によっていつも救われてきたという感じがする。僕ら兄弟の絆を繋げてくれて、多くのこと教えてくれた。僕は映画を見ることで、僕自身のこと、僕の周りで何が起きているか、を学んできた。何か問題があって、父親に相談すると、父親は解決方法とか答えをくれないで、この映画を見なさい、あの映画をみなさい、って言うから、僕らは映画の中に答えを探していた。だから、小さい時から、映画の中にとても深いものを求めていた。映画を見ながら、自分の答えを探していた、そういう子ども時代を過ごしたんだ。
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『神様なんかくそくらえ』 原題:Heaven Knows What 12月26日(土)より、新宿シネマカリテほかにてロードショー 監督:ショシュア&ベニー・サフディ 共同脚本・共同編集:ロナルド・ブロンスタイン 製作総指揮:シャルル=マリー・アントニオーズ 製作:セアスチャン・ベア・マクラード、オスカー・ボイサン 撮影:ショーン・プライス・ウィリアムズ 音楽:冨田勲、アリエル・ピンク、タンジェリン・ドリーム、ヘッドハンターズ 出演:アリエル・ホームズ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、バディ・デュレス、ロン・ブラウンスタイン © 2014, Hardstyle, LLC. All Rights Reserved. 2014年/アメリカ、フランス/97分/カラー 配給:トランスフォーマー 『神様なんかくそくらえ』 オフィシャルサイト http://heaven-knows-what.com |
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