OUTSIDE IN TOKYO
KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

第34回東京国際映画祭グランプリ作品
カルトリナ・クラスニチ『ヴェラは海の夢を見る』インタヴュー

2. ドルンティーナ(脚本家)と私は4年間に亘って、
 かなり密接に協力し合いながらこの脚本を練り上げていきました

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OIT:あなたがこの映画祭のために寄せた“ディレクターズ・メッセージ”の中に、英国の作家ゼイディー・スミスの言葉が引用されています。「第一世代が第二世代のやりたくないことをやるから、第三世代は好きなことを自由にやれる」というものです。あなたの状況は、この第三世代に当てはまると考えられますか?
カルトリナ・クラスニチ:ゼイディー・スミスは私が大好きな作家で、その言葉と出会った時、これはまさに私の状況を言い当てている言葉だと思って、とても感動したことを覚えています。私の曽祖父はほとんど読み書きが出来ませんでした。祖父母は少し読むことができました。そして、母と妹と私は大学を出ています。やはり20世紀における女性のとってきた一歩一歩は、世界的規模で俯瞰して見ても、非常に大きなステップを前に踏み出していると私は思っています。それぞれの世代がそれぞれの困難に向き合ってどのように闘ってきたかというのを見れば、仰る通り、私は第三世代というところに自分が入っていると感じています。

OIT:『ヴェラは海の夢を見る』を撮るに至った経緯を教えていただけますか?
カルトリナ・クラスニチ:2014年、子どもの頃からの友人であるドルンティーナ・バシャが、私のところに来て、まだ脚本といえるものではありませんが、ドラフトを持ってきて、これを映画にしたらいいと思うから、あなたに読んでほしいと言われたのです。一番最初に目を惹いたのが、『ヴェラは海の夢を見る/Vera Dreams of the Sea』というタイトルでした。このタイトルを見た時から心が動いたんです。Veraというのは、アルバニア語で、“夏”という意味なんです。このタイトルから伝わってくる“海”に対する恋しさというのが、本当に深く心に刺さりました。つまり、“夏”と“海”は、全く別のもの、繋がってないということに気が付いたのです。この詩的な印象に刺激されて、私の脳は回転し始め、その日のうちにドラフトを読んで、これは絶対に映画にしたいという思いに取り憑かれたのです。

OIT:映画には、“海の夢”を見るシーンや、ヴェラがタバコを吸うシーンが頻繁にあります、とても美しいシーンだと思うのですが、そうした場面も具体的に脚本に書き込まれていたのでしょうか?
カルトリナ・クラスニチ:すべて脚本に書き込まれていました。実際、ドルンティーナと私は4年間に亘って、かなり密接に協力し合いながらこの脚本を練り上げていきました。このキャラクターがどういう風になるべきかということは、私たちにとってとても重要な問題で、かなりの時間をかけてキャラクター造形を発展させていったわけです。私達は60代の女性ではないので、実際にこの年代の人がどういう風にあるべきか、しかも本当に生きている人間に近い形の人物にしたかったわけなので、十分な時間を費やして、彼女と話し合いながら脚本を書き上げました。

OIT:ヴェラを演じたテウタ・アイディニ・イェゲニという女優さんはマケドニアの舞台俳優さんであると伺っています。とても良い俳優さんだったと思いますが、彼女は元々タバコを吸う方だったんですか?
カルトリナ・クラスニチ:はい、常に、というぐらいにいつもタバコを吸っていらっしゃいます。チェイン・スモーカーです(笑)。

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