OUTSIDE IN TOKYO
KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

第34回東京国際映画祭グランプリ作品
カルトリナ・クラスニチ『ヴェラは海の夢を見る』インタヴュー

3. コラボレーションする撮影監督は女性と決めていました、
 “女性の視線”でこの映画で撮りたかったからです

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OIT:彼女に決めた理由はいくつもあると思うのですが、一番重要と思われる理由は何だったのでしょう?
カルトリナ・クラスニチ:彼女が持っているエネルギー、静けさ、そして本人がとてもシャイな方であるということが、私にとっては見かけだけではなくて、このキャラクターにはぴったりだと思いました。そして自然な形で、彼女がとても従順な方に見えることも一つの理由です。実際に長年劇場で演技をされてきた方ですので、映画ではどうなのかなということを、実は私はとても懸念していましたが、私の心配は杞憂でした。彼女は、とても献身的にこの役に成り切り、学ぶことに長けていて、いつも聞く耳を持っている、そして、社会的、政治的な文脈もとても早い段階から理解していたので、キャメラの前で彼女がヴェラを演じることに何の不安も感じることはありませんでした。さらに素晴らしいことに、彼女にはヴェラの職業であるサイレント・ランゲージ(手話)も学んで頂く必要がありましたが、実に献身的に学び、それを具現化してとても自然にやってのけられたのです。

OIT:監督の演出スタイルについて教えてください。事前に結構リハーサルをして演技を決めてやるっていう感じなのか、あるいは本番で何回も撮ったりするっていう感じなのか、どういうスタイルでやられてるんでしょうか?
カルトリナ・クラスニチ:両方とも念入りにやります。やはり素晴らしい脚本があり、とりわけ豊かな対話の部分を真実に迫った形で具体的に実現したいという思いがありましたので、リハーサルは沢山やりました。俳優たちには、会話の深みというものを心から理解して欲しいと思っていましたので何回もやりました。同時に、セットで撮影をする時は、本当にリラックスした形で行うことが私にとっては、第一優先事項ですので、もしその俳優さんが何か別なアプローチをして試したいということであればそれも出来る環境にしたいと思っています。

OIT:フレーミングは撮影監督(セブティア・カストラティ)が決めるのですか?あるいはお二人で決めるのでしょうか?
カルトリナ・クラスニチ:実際、私は今までのキャリアの中で撮影監督もかなりやっていますので、自分がキャメラの後ろにいるということには慣れています。ただ、どの撮影監督と撮るかということは、私にとってとても重要で、今回はコラボレーションするのは女性と決めていました、“女性の視線”でこの映画で撮りたかったからです。私達は二人とも、本当に地に足がついた映画を撮りたいという気持ちをすごく強く持っていて、深い共同作業を通じて、お互いにやりたいものをきちんと理解した上で、自分たちが撮るべき撮影をすることが出来たと思っています。私が彼女との共同作業を通じて、最も頑なに心に決めていたのは、何があっても、ひとつとしてスペクタクルな場面は撮影しない、暗く、地に足のついた映画を撮るのだということでした。

OIT:ヴェラが住んでいるアパートメントと田舎の家は、実際にあるものを撮影したのか、あるいは撮影用に壁を塗り替えたりとか、色々と作り込みをされたのでしょうか?
カルトリナ・クラスニチ:まずヴェラのアパートはゼロから全部作り直しました、ほぼ空の状態のものからです。内装を自分達でやりまた、それこそ家具、照明、壁の色など、すべてです。本当に、ヴェラが最初から自分の家としてこのアパートに住むために色々と物を置いてきたっていうことが実際に本物として見えるような形で、人が住んでいてとても居心地が良さそうな暖かみのある、そういうアパートを作りました。村の家に関しては、かなりの時間を掛けて、ロケーション探しを行いました。とにかくコソボでは、戦争の後に沢山の建築物が最初から作り直されてしまったりして、すべて変わってしまったんです。ロケハンをして、再開発がされてないエリアを探して、やっとこの家が見つけることが出来ました。このストーリーには、ぴったり合っていると思って選んだのです。

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