OUTSIDE IN TOKYO
kamen kalev INTERVIEW

TIFF2010 カメン・カレフ『ソフィアの夜明け』インタビュー

2. 一作目があまりにハードだったので、二作目の撮影の時も、
  一作目の異様な緊張感をどうしても自分の中で探してしまった

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OIT:この『ソフィアの夜明け』の中でも、やはりアートと現実という、粗野と美しさを求める方向性というのが衝突するような瞬間もありますよね?
KK:私自身は作品を作る時に、作品の組み立て方として、コントラストを作ることによって説得力が出ると思っています。人生や生活は、何か別々に存在していて、それがクロスしていないように見えても実は密接に関連していたり、あるいは対立していて、カオスのようになっている。そうした現実を映し出すのにコントラストを作ることは非常に重要です。現実というものは、整然と並んで閉じられたものではなく、もっと開かれている、そんな印象を観客にもたらす。人間は悲しいばかりではなく、嬉しい時もある。そうした複雑性が、作品の中のコントラストによって、より明らかになります。
ところで、“creek”のことを日本語で何と言いますか?

OIT:”川”といいます。
KK:(日本にも、ブルガリアにも川はあるけれども)そこに流れている水は同じじゃない。同じような川に見えても実はそこに流れている水質というか、その根元は違う。これは禅的な思想ではないですか?

OIT:この映画も東京国際映画祭で評価をされて成功したと言えると思うのですが、それによってあなたの川、現実は変わりましたか?
KK:おそらく。全て変わりましたよ。

OIT:その後の状況をちょっとずつ辿ってもらえますか?
KK:それほど意識しているわけではないけれども、一つの事を言ってしまうとそれはちょっと短絡的になるかもしれない。毎日毎日やはり影響している。あなたに会ったことによって私は影響を受けているだろう。それをその時には分らないかもしれないが、私の一部になっている。

OIT:次の映画の撮影はもう終わったのですか?
KK:10日前に。

OIT:それが撮れるようになったのは、この映画の成功が関わっているのでしょうか?
KK:そうですね、この映画の成功と密接に繋がっていることは間違いありません。二作目はだいたい9週間位の結構長い撮影期間だったのですが、その半分位まで、一緒にやっていたスタッフが、それは第一作で一緒にやったスタッフなのですが、一作目があまりにもハードで本当にそれが最後まで撮り終えられるか分らないという不安と緊張感の中で撮っていた、そのトラウマみたいなものがありました。だから二作目は本当は最後まで順調にいけるはずなのに、何か自分達の中で本当に終われるんだろうかという、一作目の異様な緊張感をどうしても自分の中で探してしまう、そういう状況でした。


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