OUTSIDE IN TOKYO
kamen kalev INTERVIEW

TIFF2010 カメン・カレフ『ソフィアの夜明け』インタビュー

3. 感動を生み出すためのレシピなんて存在しない

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OIT:その二作目が始まるきっかけはどんなものでしたか?その時をちょっと思い出して、教えて頂けますか?
KK:シナリオは出来ていたんです。実は二作目のシナリオは学校を卒業した時に既に持っていて、それを何とか資金を集めて早く撮りたいと思っていたのですが、結局、製作会社が何回も変わったりして、7年位寝かせたままになっていたのです。その間に『ソフィアの夜明け』をとって、それが公開される前にブルガリアの映画センターから助成金が出ることが分かったんです。だから一作目の『ソフィアの夜明け』は完璧な自主制作のような形で、国家からの援助無しに作られたものなので、かなり二作目とは違いますが、温めていた期間は二作目のシナリオの方が長いということになります。

OIT:そこから現実的にどのように俳優を探したのでしょう?
KK:この企画は非常に長い間、7〜8年位温めてきたので、最初に考えていたことが途中で変わったりしたこともあるのですが、とにかく主役の俳優は、こブルガリア語とフランス語、あるいは英語のどちらか両方を話せなければいけない、とにかく優秀なコメディアンだったらいいという風に思っていたのですが、探し始めたらなかなか見つからないんです。その俳優の役割はすごくヘビーな役割なのですが、最初にキャスティングしたブルガリアの俳優があまり良くなくて、今度は素人の人も探したのですがこちらも上手く行きませんでした。ついにはアメリカ、フランス、イギリス、色々な所でキャスティングをしました。8年も温めていた企画なのに、やっと見つけたのがクランクインの二ヵ月前だったのです。どういう風に見つかけたかというと、ニューヨークにこの映画のプロモーションに行っていた時に女性のキャスティングディレクターが、ちょっと彼に会ってみたら?と言って、デンマークの俳優さんを紹介してくれたのです。その人は昔から知っている俳優だったのでそれで決めました。もう一人はレティシア・カスタなのですが、なぜ彼女を選んだかというと、もちろん彼女のことはスクリーンを通して知っていて、彼女と一緒に仕事がしたいという風に思っていたし、いい女優だと思っていましたが、彼女がいわゆる演技学校を卒業していないというところにとても興味がありました。私は技術的な演技方法を身につけている女優さんではなく、モデル出身だということで、もっと本当の意味でのエモーショナルなものをスクリーンに発してくれるんじゃないかという直観があったのです。でもフランスでは彼女は女優としてなかなか自分の居場所を見つけられないでいる。だから、プロデューサーは本当の女優をキャスティングした方がいいんじゃないか?と何とか彼女を外すよう、僕を説得しようとしたわけです。

OIT:あなたの基本的な映像感覚、画はどのようなものですか?繰り返し撮ってしまうような原風景的な画。路面電車が走る街の風景、通りの風景がとても美しく思います。
KK:路面電車は好きだ(笑)。まあ、そんなに特徴的なっていうものはないかもしれないけど、街の建築様式、旧式なものと新しいものとのモンタージュだね。

OIT:映画にとって大事なものは何ですか?
KK:全ては感動を作るためにあるのだと思います。だからこそ、その映画を観た時にその映画の中で提示されている世界にみんなが感情移入できる。そういう要素が合わさって出来上がったスクリーンに流れている映像に観客が感情移入した時、観客はそれが音と映像で作られていることを忘れてしまう、そういうものを僕は求めています。映像とか音とか、今はそれほど大切じゃないんだっていう時もある。もちろん重要なんだけれど、テクニックとしては間違ってもいいとスタッフに言う時もある。感動を生み出すということの方が技術的に完璧であることよりもより重要だと思っている。でもそういう時にこそ、それぞれの要素が一番最適な均衡というものを見つけている瞬間なんだ。何か好きなものがあったら、どうして僕はこれを好きなんだろうって、みんなその理由を探したがるでしょう?しかし実際のところは、その映画がきれいだから感動しているとは絶対に言えないんだ。それはもっと色々な要素が組み合わさって君の感動を生み出しているのであって、一つの理由が独立しているわけではない。例えば、美しい音楽だなぁと思って、ラジオを分解してその美しい音楽の出所を探したところで見つかるもんじゃない。感動を生み出すためのレシピなんて存在しないのです。




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