OUTSIDE IN TOKYO
KITANO TAKESHI INTERVIEW

北野武『アウトレイジ ビヨンド』インタヴュー

5. プラモデル買ってきてキットが足りなくて、
 あれタイヤがねえじゃねえか?ってときに、ハンドルが付いてるってことがある(笑)

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Q:キャスティングですけど、『アウトレイジ』の前作も豪華なキャストが出演されて、その豪華なキャストもぼろぼろっと亡くなっていきます。今回もまた豪華なキャストが新たに加わってるわけですけれども、その辺のキャスティングっていうのは先ほどおっしゃったように出してほしいっていう役者さんもいるし、監督さんが出てほしいっていう役者さんも当然いただろうと思うんですけれども。
北野武:基本的には俺の映画に「出てもいいよ」って言ってくれる役者さんだけなんだけどね。キャスティングの吉川さんがいつも役者さんの写真を持ってきて打合せをして決めるんだけど。西田(敏行)さんは裏で「たけちゃん頼むよ」なんて前から言ってくれてて、塩見さんも「出たい」て言ってくれてて。だから、今回は神山(繁)さんぐらいかな、頼んだのは。大阪弁の出来る会長役を探してて神山さんからもOKが頂けてね。それからは相関図作って、役者さんの写真を置いて、登場人物の関係性からストーリーを膨らましたらしたね。撮影になると役者さんがみんな凄く協力的で、真剣にやってくれたから、かなりノってやってくれてたし、みんな喜んでくれたと思うよ。

Q:キャスティングでなかなか適役が見つからないとか、そういう事でご苦労されることは今回はなかったっていうことですね。
北野武:キャスティングはね、全然苦労しなかったんだけどね、編集が大変だったね。怒号の罵り合いのシーンでは間を詰めたりね。場合によっては俺がオフで怒鳴りを撮り直したりね。最後の方はどうにかなったけど、頭の方のシーンでは編集を何回もやって、相手の言った言葉尻ですぐ台詞入るようにしたり、それはもう編集した。編集がやっぱり面白かったけど苦労したね、各自が自分の芝居の特徴があるんで。

Q:その特徴が凄くよく出ていたと思うのが、花菱会に大友と木村が乗り込んでいった今仰っていたシーン、怒鳴り合いのシーンだと思うんですけど、素晴らしいシーンだったと思うんですが、監督はご自分で出演されて、演出家として見てOKを出す基準はどういうものなのでしょう?
北野武:台詞があまりに酷い間違いの場合は撮り直すこともあるけど、俺は編集権持ってるんで、やなとこは外すっていう(笑)。俺の下手な演技は全部とっちゃったり。だからあのシーンの役者さんは間をもって本当はやってて、台詞聞いて暫く喋んないで「なんやこら」ってやるまでに時間かかるから、でも「なんやわれ、ボケ、カス」なんて言う台詞の間がないと大阪弁になってない時がある、でもそれをどうやってとるかとか、あそこはうわーって一気にいきたかった。そこを編集でいかに詰めるかっていうのが大変だった。

Q:その編集の大変さっていうのは、あと何コマ詰めるっていうレベルの大変さですか?
北野武:要するに2カメぐらいで撮ってるんだけど、編集で実際そのシーンじゃないカットを入れる時はあるよ(笑)。睨んだ顔が欲しいんだけど、全く違うシーンで撮った顔を持ってくるのね。そこに台詞をかぶせて、本来のシーンの映像と組み合わせて、ひとつのシーンを作っちゃう。だから、プラモデル買ってきてキットが足りなくて、あれタイヤがねえじゃねえか?ってときに、ハンドルが付いてるってことがある(笑)。ただよーく見ると違うじゃねえかって。それは編集マンと俺しかわからない、観てても絶対気が付かないと思うけど。

Q:じゃあDVDとかで見たらひょっとしたら。
北野武:うん。音声がオフで入ってたり、実は間を詰めてるな、くらいは分かるかもしれないね。

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