OUTSIDE IN TOKYO
Luca Guadagnino INTERVIEW

ルカ・グァダニーノ『胸騒ぎのシチリア』インタヴュー

3. イングリッド・バーグマンは、何かとても強いものを秘めた本物の“ディーバ”だった。
 マリアンにもそういう姿を投影したかったんだ

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OIT:4人の中でも、ペネロペの人物造形が実に興味深く、最も現代的で理解が難しい人物であり、原案『太陽が知っている』でジェーン・バーキンが演じた慎ましい娘とは大違いで、映画を妖しく撹乱しています。この人物造形に、ダコタ・ジョンソンはどのように貢献しましたか?
ルカ・グァダニーノ:ダコタは他の俳優同様キャラクター造形に欠かせなかった。彼女はとても直感力があり、賢い。僕はペネロペを“イット・ガール”のような人物にしたかった。完璧に都会的で、年が若いにも関わらず、すべてを経験してすべてを知っている、そしてすべてをコントロールしている気になっているけど、実際はそうでもなかったことに気付く。そう追い込まれる姿を描きたかった。ダコタの演技は素晴らしかったよ。彼女は“イット・ガール”というものに対してとても賢い方法でアプローチしてくれたと思っているよ。

OIT:ストーンズの「エモーショナル・レスキュー」はあなたにとっても特別な1曲ですか?もし、そうでないとしたら、特別な1曲を教えて頂けますか?
ルカ・グァダニーノ:「エモーショナル・レスキュー」が特別だから使用したという事ではなくて、歌詞がハリーという人間そのものを表現していたからだよ。僕らはみんなどこかで“エモーショナル・レスキュー(魂の救済)”を求めているんじゃないかな。脚本を書き始めた1日目に偶然流れてきて、あの曲を使いたいと思った。ローマでストーンズがコンサートをした時に、バックステージにレイフと会いに行ってチャーリー・ワッツとロン・ウッドと話したんだけど、才能と人生を具現化している人たちだったよ。彼らがこの曲を作中で使うことを快諾してくれて本当に助かった。断られたらどうしようかと不安はあったけど、『ミラノ、愛に生きる』のジョン・アダムスに音楽を依頼した時も同じようなスリルを味わったけど、今回もリスクを冒してもやろうと思った。リスクを恐れていたら、この仕事をする意味なんてないと思うんだ。
他に挙げるなら、マーラーの交響曲第4番が特別な1曲だね。

OIT:今回の作品を作るにあたって、『太陽が知っている』以外の作品で参照した映画はありますか?
ルカ・グァダニーノ:この作品は『太陽が知っている』のリメイクだけど、ロベルト・ロッセリーニの『イタリア旅行』(1954)へのオマージュでもあるんだ。スウェーデンからハリウッド、そしてイタリアに移住してロッセリーニと結婚して、その後スウェーデン、そしてハリウッドに戻ったイングリッド・バーグマンは常によそ者であると同時に、何かとても強いものを秘めた本物の“ディーバ”だった。マリアンにもそういう姿を投影したかったんだよ。
テーマや、物語の根幹は、もちろん全て僕の想像だけどね。


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