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TETSUYA MARIKO INTERVIEW

真利子哲也『イエローキッド』インタヴュー

2. ガキンチョの集まりの映画にはしたくなかった

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ボクシングジムの会長さんを演じたでんでんさんが特に素晴らしかったのですが、役作りはお任せしたのですか?
でんでんさんは素晴らしいです。脚本をお渡ししてから、初めてお会いした時にもうボクシングの会長という職業にかなり詳しくなっていて、でんでんさんの方からもアイディアが出てきましたし、僕の方からも出して、じゃあ、こういう感じだよねということでやりました。僕が、生まれも育ちも東(ひがし)東京の江戸川区なのですが、その下町の雰囲気を話し言葉とかで役柄に入れたいと思っていました。荒っぽいんだけど、悪気があるわけじゃなくて、愛がある、人間としての味わいがセリフにも出ればいいなと。

でんでんさんと不良の榎本さんとのやりとりには、そうした雰囲気が濃厚に出ていましたね。
いい加減で厳しいようだけど、しっかり見ているということ。大人を出したかったんですよ。ガキンチョばっかりの集まりという感じではなく。それをやるからには、どういう形であれ、大人を入れたかった。それがでんでんさんが演じた会長という役でした。

最近の世の中の、大人が大人らしくないというか、子どものまま大人になっちゃった人が多いという風潮に対する反感もあったのでしょうか?
反感ということではないですが、最近の映画で言うと、いわゆる大人の世代の方が撮っている映画で、自分達大人の世代がちゃんとしていないから、その子どもの世代が無関心になっているという映画があって、それに対しては違和感を感じました。理解を示しているようで、その事自体が勝手な押し付けに感じる時があるんです。

真利子さんのような若い世代の方から、そうしたポジティブな発言が出てくることにはある種の力強さを感じますね。
ところで、岩瀬さんの役柄(漫画家の服部)は、当初ウディ・アレンをイメージしていたとのことですが?
そうです(笑)。はじめの段階でキャスティングを担当してくれる人がいたのですが、その人にそのように伝えました。一番最初の段階だけですが。

今回、初めて脚本を書かれたわけですが、実在の人を役柄のモデルにしたりすることはなかったですか?
主人公の田村に関しては、単なるワルというイメージではなく、ちょっと尖ったキャラクタのイメージを最初は持っていました。もの凄く具体的にある映画の登場人物をイメージしていたのですが、あまりにも恥ずかしいので、ちょっと伏せておきます(笑)。でもそのイメージの人が見つからなくて、そこに遠藤さんが現れて、やれる、やりたい!って言ってくれたので、じゃあ、任せた!難しい役だけど、やってくれ!って感じで。

それが、結果的には正解だったと。あの商店街で田村が変身する凄いシーンがあります。遠藤さんの演技も素晴らしいのですが、映画的にも素晴らしいワンシーンワンカットでした。あのシーンは狙い通りに撮れたという感じでしょうか?
そうですね、狙い通りに撮れました。脚本だとほんの数行のシーンなのですが。田村が“異界”に入っていく重要なシーンで、脚本では数行でも、自分にとってはとても重要なシーンで時間をかけてでもイメージ通りに撮りたいと思っていました。ただロケ場所を見つけたのが撮影の前日だったので、その辺はやはり現実に即して対応したという感じです。

商店街にいる皆さんは当然エキストラじゃないですよね?
はい。

人目につかないようにゲリラ的に撮影したのですか?
近くに公園があって、そこで段取りをしました。動きを話し合った上で決めて、あとはぶっつけ本番で。スタッフは隠れながら、車とかも通るので、その辺のタイミングを見ながら、さり気なくお店の前に停めてある自転車とかをハケたりしながら、パッと行ったという(笑)。やり直しがきかない一発勝負でした。

撮影期間はどれくらいあったのですか?
10日、とか12日間とか、そんな感じでした。

では、このシーンに限らず、撮り直すような余裕はなかったのですね?
なかったです。取り直すような贅沢はしていないにも関わらず、朝から朝までという日が2〜3日ありました。田村が変身した後に、鉄棒で榎本を殴って、その後、ビルの屋上からお金を投げるシーンがありますけど、その棒で榎本を殴るシーンもワンカットしかチャンスがなかったのですが、時間が押して朝になってきちゃって、、、。何とか強引にワンカットで撮りましたが。

全然順撮りではない?
もうバラバラでした。服部と三国(浪岡一喜)と麻奈(町田マリー)が三人で会話しているシーンは、会話の途中でカットして、続きは次の日に撮ったものがあります。役者さんの都合でそうせざるをえず。あと、会長さんが榎本をトイレでしばくシーン、あれも榎本が田村を殴るところまではその日で、その先は次の日に撮ったりしてました。同じシーンでも結構強引な撮り方をしました。

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