OUTSIDE IN TOKYO
Mikhael Hers Interview

ミカエル・アース『アマンダと僕』インタヴュー

3. フィルムで撮影することで主題に対して距離を置くことが出来る

1  |  2  |  3  |  4



OIT:アントン・サンコのスコアもとても良かったのですが、元々彼の音楽を知っていたのですか?
ミカエル・アース:ニコール・キッドマンが出ている『ラビット・ホール』(10/ジョン・キャメロン・ミッチェル)の音楽がすごく良くて、それがアントン・サンコの映画音楽だったのです。それで私の前作『サマーフィーリング』(15)の時に音楽を作ってもらったんですけど、結局、最終的には使わなかったのですが、編集の時に彼が作ってくれた音楽をずっと流していました。編集の時に使っただけとはいえ、その時すでに彼とは一緒に仕事をしていたことになりますね。それで、今回『アマンダと僕』で彼にパリに来てもらってデモを作ってもらったのです。私たちが映画を編集している時に、同じ部屋で横にいて音楽を作ってもらった。最終的なレコーディングは彼が住んでいるアメリカに戻って、ソルトレイクシティのオーケストラを使ってレコーディングをしたんです。アントンは、ニューヨーク出身で、映画音楽を作る前はポップ・ミュージックを手掛けていた。スザンヌ・ヴェガと一緒に音楽を作っていて、「Luka」が入っているアルバム「Solitude Standing/孤独」にも関わっていました。

OIT:この映画の中で最初に、アントン・サンコの音楽が効果的に使われているなと思ったのが、ダヴィッドと姉サンドリーヌが自転車で街の中を走っていくシーンでした。その時、彼らがバイクとすれ違うのですが、その後テロの直後にダヴィッドがバイクとすれ違いますよね、ひょっとしたら、その場面で既に予兆的にバイクを出していたのかな?と思ったのですが。
ミカエル・アース:それは考えていませんでしたが、確かに前半の幸せな日常、平穏な日常のように見えても、そういった脅威が潜んでいるということを感じてもらうということは考えていました。

OIT:『アマンダと僕』は16mmフィルムで撮影されていて(イギリス部分は35mmで撮影)、前の作品『サマーフィーリング』も16mmフィルムで撮られていますね。監督のフィルムへの拘りがあるのでしょうか?
ミカエル・アース:フィルムを使うことは私にとって大変重要なことです。私自身、フィルムで撮られた映画を観て育ちました。特にフィクションではフィルムを使うことが大切だと思っています。フィルムで撮られたものは人々に感動を与えます。あのザラザラした粒子、粒感というのか、まるでその画面を触れることが出来るかのような感覚になります。それはデジタルで撮られた、とても冷たく、あまりにも精密に撮られた映像とは違うものなのだと思います。またフィルムで撮影することで主題に対して距離を置くことが出来るのです。テーマがこうしたシビアなテーマの場合は尚更です。例えば、テロのシーンにしても、いわゆるテレビなどで流れているジャーナリスティックな映像とは全く違う、フィクションですから他のやり方でそれを語ることが出来る、フィルムを使って語ることが出来るのです。私にとってはフィルムを使うということはとても重要です。



←前ページ    1  |  2  |  3  |  4    次ページ→