OUTSIDE IN TOKYO
NICOLE KIDMAN INTERVIEW

ニコール・キッドマン『ラビット・ホール』オフィシャル・インタヴュー

3. 精神的には決してたどり着きたくいない恐ろしい場所に触れてしまった。
 これが私の役作りなのだと思います

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Q:母親役にダイアン・ウィーストを選んだ理由を教えてください
ニコール:ダイアンとは以前に仕事をしたことがありました。彼女はこの世界の最も素晴らしい女優の一人です。ダイアンの素晴らしい点は、映画の中で、彼女が言葉のもつ説得力を獲得していることだと思います。深い悲しみ、喪失感とともにどうやって生きていくかについての独白、どうやって?実際にどうやってそんなことができるの?私が演じたベッカが母親に尋ねます。今より良くなることなどあるの?と。私はダイアンがそれに答える画を思い描くことができました。

Q:ジェイソンを演じたマイルズ・テラーについてはいかがでしたか?
ニコール:彼こそはまさに才能の発見でした。マイルズの素敵な特徴のひとつは、顔が赤くなることなの。スクリーンで見て分かるのよ。素晴らしい! 俳優が顔色を変えられるというのは、名演技の要素です。そういう奇跡的なシーンができると、感情がとてもリアルになるんです。

Q:アン・ロスが担当した今回の衣装について教えてください。
ニコール:どの衣装にも、どの服の部分にも観ている人の関心が向かないよう、登場人物たちに服を着せなければなりません、最終的にすべてが目を引かないものになるようにしなければなりませんでした。これはとても難しいことだったと思います。それに私のような人間に、彼女はいつも「あなたは178センチね、そしてあなたを郊外居住者のように見せなくちゃならないのね」と言うんです。それで私が彼女に「でも私はそう見えるわ、そう見える!」と言うと、彼女は「いいえ、見えないわ」と(笑)。そんな風にして役の衣装を作っていきました。

Q:主人公のベッカが置かれている困難な状況をどのようにとらえましたか?
ニコール:ベッカの禁欲主義的なところに身を置くことにしました。ベッカはひどい苦痛の中にいて、もし触れればすべてが壊れてしまうかのようです。そう思いながら、ずっと演じていました。子供を失くした女性なら誰でもそういう感情をもつのだと思います。息子を失ったことですっかり弱って駄目になってしまった中で、毎朝目を覚まさなければならない。ベッカにとって唯一できるのは、ただ前に向かって進み続けること。彼女は必死になって人生を選ぼうとしている。だから絵画を取り外したり、家を片付けたりしながらこう言うの「ただ悲しみに押しつぶされて死ぬなんて、私にはできない。それなら、どうやって生きていけばいい?その方法を見つけなきゃ」ってね。

Q:実際の役作りについて教えてください。
ニコール:自分の内面の奥深くにある、触ってほしくないような恐ろしい場所に触れてしまったわ。精神的には決してたどり着きたくなかったけど、なぜかたどり着いてしまった。これが私の役作りなのだと思います。そこに行き着くまでは大変だけれど、いったんそこに行ってしまうと、完全にそのキャラクターを吸収してしまうの。それに私はベッカとその家族に対しては、とても深い思いがあります。

Q:あなたの演技は、この痛切な物語にユーモアも与えています。
ニコール:人生の中で、どんなにひどい苦痛に見舞われてもユーモアを失わない。それこそが人間の魅力だと思います。それがまた、このような物語を分かりやすくしているのだと思うんです。だって、もし誰かが苦しんでいたとしても、その人を笑わすことができれば、多少なりとも心を開かせることができるわけだから・・・。ユーモアはいつだって存在すると思いたい。たとえ、それがダークな形をとっていたとしても・・・。

Q:この映画は観客に何をもたらすと思いますか?
ニコール:この映画の登場人物に対して、私たちは心を開くことができると思います。それは彼らが皆、正直で本物だからです。家族とはそういうものだし、映画を見た人たちは登場人物たちと一緒に、彼らの体験を分かち合えると思うのです。


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