OUTSIDE IN TOKYO
JEAN-PIERRE & LUC DARDENNE INTERVIEW

ロベール・ゲディギャン『キリマンジャロの雪』インタヴュー

4. カウリスマキとは友人です。ケン・ローチも、ダルデンヌ兄弟も、彼らはみな友人です

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OIT:一貫して信じてきた中で、そのやり方が通用しないかもしれないというような、最初の挫折はいつ頃感じられたのですか?
RG:80年代に入ってから。その時代にものすごく映画に没頭するようになりました。というのは、もちろん政治的な活動というのは自分なりに続けてきているつもりだが、それまでのものと一線を画したのは、その時の政治で自分自身を表現することがなかなか出来なくなった。だから一線を画し、自分の表現を映画でやっていこうという流れになりました。

OIT:この映画でも、ダイレクトで声高に観客に対して何かをぶつけるというより、人の温もりとか、ユーモアをもって表現していると感じられるのですが、それは意識して作られているのですか?
RG:もちろん、それは意図的にそういう風に作りました。こういう作品を作る時に、やはりどういう形でそれを見せるか、つまりどういうシナリオを書き、どういう役者さんに演じてもらうかというところに全てかかってくるのだが、作っただけではなく、たくさんの人に観てもらわないと意味がないわけですから、そういう意味では多くの人たちがどういう形にしたらこの映画を観てくれるだろうかというところで、やはりものすごく考えたし、準備しました。この映画の感情が観ている人に伝わらないと意味がないので。映画で重要なのは、どういう感情を表現するかということだと思うんです。まずそれがあって、次にくるのがメッセージ性だと思うんです。

OIT:僕らは現在のヨーロッパの右傾化し、熱狂する人たちのニュース映像を見ることがあり、その中でこの映画は人々に(メッセージを)届けるとても有効な方法だと思うのですが、そんな状況の中でこの映画を提示する監督が持つ印象はどのようなものですか?
RG:やはり(この映画が)闘う為の一つの手段だと思っています。フランスは今(2012年4月の大統領)選挙の真っ最中ですが、来週いい結果が出ることを望んでいます。

OIT:最後に、監督が闘う映画として影響を受けてきた映画をいくつか教えて頂けますか?
RG:小津(安二郎)さんはとても好きです。

OIT:小津さんは闘う監督ですか?
RG:自分と同じようなタイプの闘う監督ではないけど、要するに人々の人生をとても細やかに、正確に描く監督だと思います。仕事であったり、家族であったり、家庭であったり、愛であったり、色々な角度から非常に正しく描く監督だと思います。だから小津さんの作品というのは、なんて言うのでしょう、その度に、問題を投げかけるような作品ではないけれど、彼が提起する問題は本当にジャストな問題だと思います。

OIT:今、労働者を同じように扱っている『ル・アーヴルの靴みがき』の(アキ・)カウリスマキ(の作品)などはどう見ますか?
RG:(彼は)友人です。友人でありながら同じ歳ですし、フィンランドの彼の家にも行ったことがあります。

OIT:闘う仲間ということですか?
RG:はい。あとケン・ローチも、ダルデンヌ兄弟も、彼らはみな友人です。

OIT:彼らはみんな人を愛嬌豊かに描きますよね。
RG:要は、貧しい人たちの持っている豊かさを描くこと自体が、映画人の自分にとってとても魅力があるし、それこそが革命的なのです。


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