OUTSIDE IN TOKYO
Roberto Ando INTERVIEW

ロベルト・アンドー『修道士は沈黙する』インタヴュー

4. ルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け」という曲は、かつて自由の象徴だった。
 その歌を今はその理想を裏切っている、大臣たちに歌わせてみたかった

1  |  2  |  3  |  4



OIT:トニ・セルヴィッロがまたしても素晴らしかったわけですが、役作りについてどのような話をされたのでしょう?
ロベルト・アンドー:今回の役は彼にとっても凄く重要で、彼のキャリアを決定づけるような意味があったようです。お互いにとても時間をかけて準備をしましたが、彼は修道士について多くの書物を読み、ドキュメンタリーを含めて幾つもの映画を見て、この役に臨んでくれました。今回の役柄は彼にとっても特殊なものだったようで、彼自身、自分の中にある深いものを見つける体験となったようです。最終的には断食をするまでに至ったのです。この映画の中で彼のカバンの中が見えるシーンがあって、そこにはクルミが2つだけ入っているわけですが、実際に、一日の撮影の中で、彼はそのクルミ2つしか食べなかった日もあったというほどです。イタリアの役者が、誰もがスタニスラフスキー式アプローチで役に成りきるというわけではないのですが、彼は本当に役の中に入り込んでいました。

OIT:最後に、音楽についてお聞きしたいのですが、ルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け」を、ヨハン・ヘルデンベルグ演じるロック・ミュージシャンが歌っています。ヨハン・ヘルデンベルグは、ブルー・グラスの音楽が素晴らしかった『オーバー・ザ・ブルースカイ』(12)という映画で見たことがあったのですが、監督は彼をどこで発見したのですか?そして、何故彼にルー・リードの曲を歌わせたのでしょう?
ロベルト・アンドー:私もその映画で見て、彼を知りました。彼は役者であり歌手なのですが、最初はミュージシャンを使おうと思っていたのです。真っ先に思い浮かんだのはボブ・ゲルドフだったのですが、ちょっと歳を取り過ぎている。ヨハン・ヘルデンベルグはベルギー人ですが、彼ならば役者であって、歌も唄えるということでロック・スターの役をやってもらおう、(U2の)ボノにやってもらうよりは随分いいはずだと思ったわけです。何故あの曲だったのかと言えば、「ワイルド・サイドを歩け」という曲はあの当時、自由のシンボルだったわけです。あの大臣たちも、若い時はその世代で、「ワイルド・サイドを歩け」を唄っていた可能性もあるわけです。しかし、今や、彼らは全く逆の立場、権力の側にいるわけです。つまり、あの曲で歌われていた理想を裏切っている。そういった人たちにあの曲を歌わせる、ということをしたかったわけです。



←前ページ    1  |  2  |  3  |  4