OUTSIDE IN TOKYO
TALK SHOW

佐藤優『マルクス・エンゲルス』トークショー

4. この映画が三国合作で作られたのは、
 ヨーロッパの根っこにある“人間の本来のあり方”に対する想いがあるから

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ところで、マルクスは映画の中で経済学を勉強しなきゃいけないと言ってたんだけれども、この映画に出ていた“交換”とか、そういうことだけ見ても聞いてても、今ひとつ経済のことよくわかんないでしょ?どうしてかというと、まだマルクスの考えが固まってなかった。これはまさに“若いマルクス”で、経済を一生懸命やらないといけないともう一回マルクスが思い直すのは、『共産党宣言』を書いて1848年に革命が起きるんだけど、それが失敗したから。『共産党宣言』もすごい立派な文章のように見えるけど、実際は慌てて5週間で書いた文章だっていうことははっきりしている。しかも、(映画でも描かれている通り)あの共産主義者同盟には色んな考え方の人がいた、その色んな考え方の人の考えを併せて作ったから、どこまでがマルクスの真意なのか実はよくわからない文章になっている。

ちなみに、反動的社会主義っていう言葉が『共産党宣言』に出てるけど、この社会主義の考え方に近いのはナチズムです。だからナチズムなんていうのもマルクスの『共産党宣言』では先取りされてる。それから所謂共産党より左だと見られた新左翼っていう人達の考え方も、ここに出てくるヘーゲル左派に非常に近い。そういう意味においてはヘーゲル左派っていう人達の考え方は、未だ克服されていない。

あとこの映画は、多分アメリカじゃ全然流行らない、見ていても難しくてよくわからないから。『ゴジラ』はアメリカ人にうける、『スター・ウォーズ』も大丈夫なんだけど、この映画は難しすぎて眠くなるっていう感じ。それから金儲けがなんで悪いの?そういう感じ。それがなぜ、ヨーロッパで、しかもイギリスではなく大陸のフランスとドイツとベルギー、そこの三国の合作映画でこれが出来たのかっていうのが、ヨーロッパの根っこにある“人間の本来のあり方”、そういうことに対する想いだね。

それから、ここで義人同盟とか共産主義者同盟とか出てくるでしょ、これ基本的に職業集団なの、今でいうところの労働組合。だから郵便局員達の組合とか、鉄道労働者の組合とか、あるいは繊維労働者の組合、こういう組合というものによって労働者の運動は出来るんだっていう考え方もこの映画の中には入ってる。これはサンディカリスムっていう考え方です。


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