OUTSIDE IN TOKYO
SONO SION INTERVIEW

園子温『希望の国』インタヴュー

4. 日本人に向けて作った、一見さんお断り映画

1  |  2  |  3  |  4  |  5



OIT:ご自分が、家族を持たれたことっていうのは、視点に影響したりしますか?
園子温:いや、ないと思いますね。3月11日があまりにも大きいので。

OIT:『希望の国』は製作的にはどうでしたか、資金集めも含めて。
園子温:最近ヒット作が続いたので、日本の会社の皆さんが是非次はうちでってみんな言ってくれてたんで、安心して企画書持っていったら、この手の映画とてもとてもって逃げましたね。原発にこんなにも拒否反応をすることに驚かされました。もうちょっと食い付くとこあるんじゃないか、こんなに原発でみんなが考えなきゃいけない時期なんだから、良心的な会社があるんじゃないのと思ったら、全然駄目でがっかりした。なんだ、みんな結局、娯楽映画かって。そして海外にヘルプしてもらった展開は、日本人として恥ずかしいですよね。

OIT:海外のヘルプはどこから?
園子温:イギリスと台湾。

OIT:じゃあ、かなりのウエイトをそこで賄うことが出来たっていうことですか?
園子温:結構なウエイトじゃないですかね。だからやっぱり、タブーはタブー、まだこんなことが起きてもタブー。こんなに表沙汰になったのに、まだ闇なんだとびっくりしちゃう、あと何発爆発すればタブーじゃなくなるだろうっていう。

OIT:その問題を感じる人から見ると、どっちが危険なんですかね?ドキュメンタリー的なリアリティなんですか、それともフィクションで人の顔が見える形で載せられていく方が嫌なんですかね?
園子温:ドキュメンタリーは今、本当にお金無くても作れるけど、やっぱりドラマはある程度お金が掛かるので、出資者的にはドキュメンタリーは自分で貯金してりゃ作れる、でもやっぱりドラマとなると自分の貯金で作るわけにもなかなかいかないから、そこがやっぱり決め手だと思うんです。だから、今回、次の映画は自分の貯金で作れる福島の映画を撮ってみようかなと思ってる。もちろんそれだけじゃなくて、何かそういう出資を募ってもう一個作りたいとは思うんですよ、でもそれってなかなか大変なことなんで。でもやんなきゃいけないから、やってこうとは思いますけど。ドキュメンタリーなのかドラマなのかはともかく、とにかくやり続けることですよね。それしか決まってない。

OIT:そうですか。『ヒミズ』以前に作られてたような物語を平行することじゃない?
園子温:もちろん平行します、息がつまっちゃいますからね。やっぱり息抜きは常にしないと、どっかで辛くなってくと思うんで。

OIT:最近撮られてきてた作品のようなものを期待してる海外の人、結構いますよね?
園子温:海外はみんな違うことを期待してると思うんです。海を越えるとどうしても遠い火事を見つめるようなもんですよね。『希望の国』は別に海外に見せる為に作ってないですから、逆に言うと一見さんお断り映画だと思うんですよ。あのライムスターの宇多丸が『ROOKIES』って一見さんお断り映画だよねって言って、ああ、それ面白い言い方だなって思ったんで、僕、今回使ってるんですけど、『ROOKIES』はテレビを見てない人には最後の劇映画見ただけじゃ、さっぱり分からない映画だから一見さんお断り映画だと、これもそうなんですよ。だから、頭から何が起きたかいちいち言って、はい、本編ですよなんてやってない、それは日本人だったら誰だって知ってるんだから、いちいちそんなのいらないんです。だから地震のシーンもいらないし、日本人がみんな知ってることはいちいち映画の中に出さない、一見さんお断り映画っていうか、海外の一見さんにはちょっと分かりづらいところもいっぱいあるだろうけど、そういうことなんだよっていう、だって日本人に向けて作ったんで。

OIT:福島の人に向けた上映会みたいなものは?
園子温:それはもう自主判断ですね。別に福島の人に是非とも見てほしいっていう気持ちはないです。彼らは体験してるわけだし、取材した人は頑張ってとか声かけられないくらい辛い人もいっぱいいるわけで、こんな厳しい映画見て、また辛い思いさせたくもない。だから、見たい人だけ見てくれ、やっぱりこれは福島以外でのほほんとしてて、俺関係ないもんっていう人の首根っこ掴んで、お前見ろってやるのはいいけど。二度も三度も苦しい体験を追体験しなくてもいいんです。でも意外と本当に被災した人って嫌がらない、よくNHKの人も言ってるんだけど、NHKで津波の映像とか流すと、もう忘れたいのにああいうの流さないで下さいって苦情いっぱいくるけど、ああいう人は家が無事な人だって聞きました、津波で家流された人はいくらでも流してくれって、みんなが忘れないように、このことが全ての人に記憶に残るように、いっくらでも流してほしいっておっしゃるそうです。忘れたいんだなんて言う人は甘っちょろい人なんですよ、被害受けてない人がよく言うし、『ヒミズ』の被災地に対して意見を言う人も被災地と関係ない人、被災地の人はみんなあれを見ると喜ぶんです。ここ確かにああなってたって、これを記憶にずっと残してくれって。だからやっぱりね、全然温度差がある、そういう温度差の話っていうのもいつか映画化したいな。被災地って、境界線があるんですよ、石巻にも。地形における、水の流れで流される家と流されずに済む家。石巻に5月に行った時の話だけど、すれすれで助かったコンビニがあって、そこは24時間経営してるんです、そこにはガラスの向こうは地獄絵、なのにコンビニに入るとハワイアンのミュージックが流れてて、いらっしゃいませーって接客して、高校生が稲川淳二の怖い話を読んでて、めっちゃこえーなこの話とかやってるんだけど、そのガラスの向こうにめちゃくちゃ怖いのが広がってるのに、もう鈍感になって慣れちゃったのか、稲川淳二のが怖いっていう。
1  |  2  |  3  |  4  |  5