OUTSIDE IN TOKYO
TALA HADID INTERVIEW

タラ・ハディド『ハウス・イン・ザ・フィールズ』インタヴュー

3. 吟遊詩人が歌うことで過去が現在と繋がり、
 また現在がもしかしたらあり得べき未来とも繋がるかもしれない

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タラ・ハディド:ご指摘頂いた通り、フィクション的な手法を取り入れたのは、吟遊詩人の存在があったからです。この山間部の人々にとって吟遊詩人、詩人という人達はとても重要な存在で、村から村へ、伝え歩く情報の“管”みたいな役割をしているんですね。村から村を移動して人々の歴史を伝えたり、色々な風刺を思い出させたりするわけです。結婚式やお葬式、収穫祭など、様々な儀式を訪れて、今まで伝えられてきた風習を彼らに今一度思い出させるということをしています。その時に音楽、曲というものがとても大切です。

その曲があり、彼らがその歌を歌うことで過去が現在と繋がり、また現在がもしかしたらあり得べき未来とも繋がるかもしれない、そういう役割を果たしていると思います。吟遊詩人がそのフレームを作ったわけですが、“額縁”はまた、自然との繋がりもあるわけなんです。構成としては3つのシーズン、季節は3つしか使っていませんので、それぞれが枠取りされて額縁の中に入っていて、リアルであるものと非現実的なものとが交差する形で入っています。そして、彼らの生活と、彼らが自分について語る部分で構成されているという意味で、彼らに限らず、私たちの誰もが自分を見る時にそういう見方をするという風に考えることが出来るのです。

私がこの村に最初に入っていった時、最初にやりたいと思ったのは、この人達の生活を、時系列で順を追って語るようなお話を作りたい、クロニクルを作りたいって思ったんです。私はジャーナリストではありませんから、フィルムメーカーとして彼らのストーリーを語りたいと思いました。つまり、そこではカメラも吟遊詩人になって彼らの生活を語る、その時、ストーリーの部分とリアルな部分の境目は非常に薄いものだ私は感じています。

録音に関して付け加えますと、クレジットを見ていただくと分かるのですが、妹さんの名前がクレジットされています、2年くらいの時間を一緒に過ごしている内に、彼女が映画のテクニカルな面に興味を持ち始めたんです。それで、私は彼女に録音を手伝ってもらいました。ですから、彼女は自分のポートレート、肖像画を作るにあたって自分自身も参加しているということになってきたわけです。つまりこの作品はルポルタージュではないんですね、本人が制作にも参加してるということです。

ある時、彼女にマイクを渡して好きなものをとってごらん、自分にとって大切なものをとってくださいってお願いしたんです。そうすると、マイクロフォンは彼女の一部になっていきました、つまり登場人物である二人の女の子は映画作りに参加もしているということです。撮影とフレーミングの両方に彼女達は参加しています。二人が朝起き上がるシーンがありますよね、あの場面は彼女達が監督も務めているようなものです。

私は彼女達と共に寝起きしていて、彼女達が起きるシーンを撮ろうと思っていたのですが、カメラにレンズを入れるのを忘れてしまったのです。それで、「ごめん、もう一回やってほしいんだけど、自分でやってみる?」って聞いてみたんです。それから、彼女たちは自分達でどういう風に起きるかというのを再構築しました。どういう洋服を着て、どういうセッティングでどういう風に撮るかということを彼女達が考えました。彼女達がそういう形でフレーミングにも参加しているわけです。



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