OUTSIDE IN TOKYO
KENJI YAMAUCHI INTERVIEW

山内ケンジ『ミツコ感覚』インタヴュー

2. 僕の場合は、まずキャストを決めてから、タイトルと内容を考える

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OIT:ワルシャワ国際映画祭(インターナショナル・コンペティション部門)に呼ばれたんですよね?
山内:字幕をつけて、色んな映画祭に出品したんですよ。

OIT:かなり字幕が多い映画ですよね?
山内:すごい多いです。

OIT:可笑しい部分とかのリアクションはどんな感じでしたか?
山内:結構ちゃんと反応すべきところで反応してましたね。ポーランドの人達も。

OIT:『ミツコ感覚』は割とポーランドとか、東欧方面のユーモアのセンスと通じやすい感じがあるのかもしれませんね。
山内:そうですね、ポーランドのテレビ局の取材を受けたんですけど、なんか、チェコっぽいって言われました。なんかよく分んないけど。

OIT:ちょっとシュールな。
山内:そうそう。そう言われてなんかそうなんだって。

OIT:秘密があって、隠されたものが色々あって、曇天の天気も含めて、そういう気配といいますか。
山内:そうですね、あとやっぱり謎が謎のまま残ってるとか、カタルシスがないみたいな(笑)。

OIT:今回の役者さんは、よくご存知の方ばかりですか?
山内:当て書きをしてますし、そうです。

OIT:舞台の場合は、基本的に当て書きですか?
山内:そうですね。キャストを決めてから内容を考えるんで。内容が漠然とあってキャスト決めるっていう人もいるんですけど、僕はまずキャストを決めて、タイトルと内容を考えるんですよね。

OIT:それは非常に演劇的な。
山内:演劇じゃなきゃありえないですね。演劇ってそういう意味では特殊で、まず最初に劇場を押さえるでしょ、何にも決まんない段階で、一年先とかの劇場を押さえて、それからキャストを決めて、まあ劇団だったらキャストは決まってるけど、僕の場合は毎回プロデュース公演っていうかキャストを変えるので。この人で書きたいなと思う人をよく頼むんですよ。それから内容を考えるっていう感じ。まあ僕だけじゃなくて、小劇場の場合は、そういう人は結構いるんですけど。

OIT:キャストを決めてから脚本ができるまで、山内監督の場合はどれ位かかりますか?
山内:演劇の場合は、そうですね、決めてから結構先だから。稽古って公演の一ヵ月くらい前なんですよ、半年くらい前にキャスト決めないと、その人がまた別の公演にとられたりするので。それから、でも半年の間すぐ考えるわけじゃなくて、ぼんやりずーっとどうしようかなみたいな、ちゃんと考え出すのはやっぱり稽古始まる一ヶ月くらい前だから、二ヵ月くらい前に一生懸命考えて書き始める、って感じですね。

OIT:その稽古の段階では台本が完璧なものになっているんですか?
山内:いやいや、稽古の時に半分あったらいい方で、だいたい半分くらいですね、それで稽古を見ながら残りを書くっていうのが最近の舞台のパターンですね。

OIT:今回はどうでした?
山内:映画はそういうわけにはいかないので、映画撮影の前には本はありましたけど、でもそうだな、どのくらいかかったかなぁ。一度、中断したんですよ、あのストーカーのシーンとかを書いて、それから舞台の公演準備をしなくてはならないから舞台の脚本をやらなくちゃいけなくて、それが終わってから残りを書き始めて、トータルで三ヵ月くらいかかってますかね、書くのに。

OIT:先日のインタヴューで、初音さんは撮影が始まる前に、監督の頭の中にはもう200%映画が完成してて、現場で色々役者が崩していくっていうプロセスがあったんじゃないかってことをおっしゃっていました。そのポストプロダクションの段階と撮影の現場はどういう感じだったのでしょう?
山内:そうですね、脚本はほとんど変えてないんで、確かに初音さんが言うように、ちょっとカットしたところがあったくらいで、変更っていうのはほとんどなくて、っていうかみんな知ってる人達なんで、だからもうその人の口癖とか、イントネーション、しゃべり方、そういうのを完全に当て書きをして台詞を書いてるんで、だから出来てるっていえば出来てるわけです。撮影が始まる前に一週間くらい公共施設で稽古をして、芝居の時と同じようにね、長いシーンだけですけど。でも稽古をしてたら、公共施設を追い出されちゃって。結局、カラオケボックスで稽古したんですよ。

OIT:あの家の中の三人(初音、石橋、古舘)のシーンですかね?
山内:そうです。他の部分は、芝居はほとんどみんな固まってたので、撮影現場ではそれほど苦労せず。

OIT:撮り方とか、キャメラの動かし方とか、そういうのも固めていたんですか?
山内:そうですね、それはね、基本的には2キャメで撮ってるんですけど、カメラマンがなかなか優秀な人だから。まあ一緒に随分やってるので、橋本(清明)君っていうんですけど。CMとかでも結構やってきているので、何も言わなくても、僕が思っていたアングルにもう来てるので、そんなに打ち合わせとかもしてしない、もう任せてる感じ。それでだいたい拾っていく。長い芝居があります、例えば古舘さんの奥さんとの結構緊張する芝居とか。そういうところは、普通だったら引きから始めて寄りを撮るんだけど、リハーサルの時点で芝居がとてもいいことがわかってたから、そんなに何テイクもやるとまた同じことやるかって感じになっちゃうから、だからカメラマンが勝手に寄りから撮りだすとかね。スタッフとはとてもいい関係で仕事が出来たんですよね。

OIT:初めの方のシーンで姉妹が住んでるミツコさんの家に古舘さんが来てビールを飲んで、だんだん込み入った話になっていきますよね、あのシーンは結構カットを割ってたと思うんですけど、あれは2台で撮りつつ、芝居は続いていたということですか?
山内:そうです。あれは、あの長いシーンを最初から最後まで一挙に行ってますね、それを2台で何回戦かやるんですね。だから石橋けいさんはホントーッに消耗したって言ってましたよ(笑)。カメラがどこから撮られてるか分らないし、何テイクかやるんだけど、全テイク全部気合い入れてやらなきゃいけなくて。


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