『ミツコ感覚』という映画を一言で説明するのは難しい。どんな話かと聞かれれば、父親の浮気が原因で母親を自殺で亡くした美人姉妹が更なる困難に見舞われるお話なんだけど、、、と言い淀みながら、変な話なんだけど、これが結構面白いのだ、と言い切って、まずは観ることをお薦めするしかない。
初音映莉子演じる妹ミツコはストーカー男(三浦俊輔)につきまとわれ不快な思いをしている、その上、姉のエミ(石橋けい)は、妻のいる男性(古舘寛治)と不倫をしていて、ミツコはそんな姉に不満を抱いている、そもそも母親を死なせた父親をミツコは許せない。姉のエミは、割り切った俗物根性を発揮し、現実を受け入れているようだが、妹のミツコは、納得の行かない現実を受け入れることができず、心の内にヒリヒリした感覚を宿している。二人には、これといって慶事が起こることもなく、むしろ、曇天の空の下、招かれざる事態ばかりを出来し、美人姉妹の日常は陰鬱な色合いで彩られていくだろう。それなのに、観ていると声を出して笑ってしまうという、正統派のブラック・コメディである。
ストイックな感覚を内面に宿し、凛とした佇まいでサディスティックな官能性を開花した女優初音映莉子に関しては、先日掲載したインタヴューをお読み頂くとして、今回は、ソフトバンクの「犬」のシリーズなど、数々のヒットCMを手掛けていることで知られている山内ケンジ監督のインタビューをお届けする。ブニュエルが『皆殺しの天使』で描いたように、理由もないのに、その「場所」から出られないでいるという、かつてはシュールに見えたその状況が、ある種のリアリティを持って、私たちを取り巻く現実の比喩のように見える昨今、山内監督が繰り出す、独特のロジックで展開する不条理劇が、現代においては普通にリアルであるというだまし絵的な状況を浮き彫りにする。演劇で培った役者との関係や作劇の技術を武器に、現実と摩訶不思議な接続を試みる「山内ワールド」を、これからもスクリーンで観る機会が増えることを楽しみにしている。
1. 周防(正行)さんの方が僕より少し上、万田(邦敏)さんとかと同じ世代です |
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OUTSIDE IN TOKYO (以降OIT):監督は今まで舞台やCMをたくさん手掛けてきて、今回初めての長編映画作品ということなんですが、かなり昔から映画を作りたいと思っていたのでしょうか? 山内ケンジ(以降山内):いや、そんなに昔からじゃないです。映画はいっぱい観てましたけど、大学時代は演劇ブームにはまってたから、特に映画をやりたかったというわけでもなかった。そもそも僕の世代は映画監督になる道がなかったんですよ。撮影所はもちろん無い、機材的にもまだ誰でも撮れる機材じゃなかったから。映画会社もないから、僕の世代で映画監督になってる人って、たいていピンク映画から入ってる。 OIT:周防(正行)さんとか?
山内:周防さんの方が僕より上ですけど、まあだいたい同じような世代です。万田(邦敏)さんとか。映画監督っていうのは考えてなかったんですけど、結局CMは映画のシステムでやってますから、スタッフもそうだし。映像を撮ってるうちに長編をやりたいなという風になってくるんです。CMで話題CMとかをやると、映画やらないかと当然言われるんです。脚本もあったり、原作渡されたり。オリジナルも書かないかって言われたこともあるんですけど、なかなか出来なくて、原作モノにも乗れなかったり、途中で消滅とか随分あったんで。 OIT:それで今回はこの『ミツコ感覚』をやろうというきっかけは?
山内:初音(映莉子)さんと石橋(けい)さんを姉妹にした『新しい男』っていう舞台を上演したんですけど、その姉妹がとても本当の姉妹に見えた、二人共、大きくて白くて。喧嘩のシーンもあるんだけど、とても面白いなと思って、これだったら姉妹を中心に映画にしたいと。その『新しい男』という芝居とは全然内容は違うんですけど、姉妹という部分は共通で映画に出来る、これなら書けるかなと思ったんですよね、それで書いた。 OIT:それからは順調に話が進んだという感じですか?
山内:制作会社が、いつものCMの方の制作会社だし、スタッフも普段CMでやってるスタッフなんです。配給もそうだし、全然、自主制作ですから。配給とか決まって映画会社とかが入ってくると出来なかったと思うんですよ。
OIT:色々言われちゃって?
山内:そう、やっぱり僕も初めての長編映画だし、キャスト的にもそんなに有名な人が出るわけじゃないので。オリジナルの脚本だし、良い条件ないので、そういう形でないと作れなかったと思うんですよ。 OIT:今まで関係があった方々と共にもう作っちゃったっていう感じなんですか?
山内:そうです、そうです。
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『ミツコ感覚』 テアトル新宿、立川シネマシティ他全国順次公開 脚本・監督:山内ケンジ 製作:小佐野保 プロデューサー:木村大助 撮影:橋本清明 照明:清水健一 美術:原田恭明 装飾:三浦伸一 スタイリスト:加藤和恵 ヘアメイク:陽(akira) 録音・製音:木野武 音響効果:森木由美 編集:山内ケンジ、河野斉彦 助監督:井川浩哉 ライン・プロデューサー:石塚正悟 音楽:L.ベートーヴェン、D.スカルラッティ、A.モーツァルト、大城静乃 制作:ギークサイト 出演:初音映莉子、石橋けい、古舘寛治、三浦俊輔、山本裕子、永井若葉、金谷真由美、岡部たかし、金子岳憲、本村壮平、端田新菜、木之内頼仁、安澤千草、ふじきみつ彦、菅原直樹 2011年/日本/106分/35mm/カラー/アメリカンビスタ/DTSステレオ 企画・製作・配給:ギークピクチュアズ © 2011 GEEK PICTURES 『ミツコ感覚』 オフィシャルサイト http://mitsukokankaku.jp 初音映莉子『ミツコ感覚』 インタヴュー |
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