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レオナルド・ディカプリオ『シャッター・アイランド』記者会見全文掲載

3. 僕の口から、2度も3度も見て下さいと言うのはおこがましいけど、1度は見てほしいな(笑)

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Q:相当に濃く勉強しましたか?
L:もちろん。さっき言ったように、見てもらえばよく分かると思う。映画に現れているはずだ。スコセッシの映画を見せるプロセスから、撮影前に4、5本の映画を見た。たまに、ひとつのシーンのペースやトーンを理解するためだけに、映画を丸ごと1本見ることもある。スコセッシ監督とは『アビエイター』でもやった。夕食のシーンをどうすべきか理解するために『ヒズ・ガール・フライデー』(39/ハワード・ホークス)を見た。彼と仕事をする機会がある度に、役者としてどうすべきか勉強になるだけでなく、映画やその歴史について学び、理解できるようになるんだ。
彼の思い入れは伝染しやすい。映画への愛情だ。最近、アメリカのゴールデン・グローブ賞の受賞式で、彼にライフタイム・アチーブメント・アワードを手渡すことができた。彼についてスピーチを書き、考え始めた。日本にクロサワ(明)がいて、日本の歴史の一部のような偉大な監督たちがいるように、僕らがマーティン・スコセッシ監督について考える時、今から何千年経っても、人々は彼の映画を見続けるだろう。誰もが黒澤監督の映画を見ているように。映画というアート・フォームの中で際立つ監督は少なからずいて、彼もその一人だ。だから僕の意見では、彼のことばかり話すのも何だけど、彼と仕事するのは喜びであり、光栄なことであって、彼自身のアート・フォームでは真の伝説だ。
Q:今回、ネズミがたくさん出てくるシーンとか、崖を下りたり上がったり、暴風雨の中を歩いたりと、大変なシーンが多かったようですが、中でも思い出深い、ここはつらかったというシーンはありましたか?
L:まず、ネズミについて僕に言わせるなら、彼らは最もプロ意識の高いネズミだったよ(笑)。僕らはネズミで岩が覆い尽くされているという撮影日を不安に思っていた。まあ、楽しみにしていたとは言いがたいよね。なのにネズミたちはプロの人たちに信じられないほど訓練されていた。動物の訓練をする団体があるんだけど、このネズミたちはしっかり立ち位置を守っていた。じっとしていたし、昼休憩をとり、戻ってくると、タバコを吸って、台詞も完璧に言えた(笑)。まあ、それは言い過ぎだけど、素晴らしいネズミたちだった。岩の上でじっとしていた。よく訓練され、素晴らしく仕事がしやすかった。映画にあるくらいネズミの数がいて、少しだけ(CGIで)いじったりはしたけど、一流のネズミが50匹はいたよ。
映画は巨大なハリケーンが襲う中で巻き起こる。僕とマーク・ラファロのシーンでは5、6ページ分の台詞があり、捜査中の事件について話している。2階くらいの高さの巨大な扇風機を使って、消防ホースで水をかけられ、雨が降りしきる。そして互いに何て言っているか分からない状態で1週間ほど仕事を続けていた。まるでパントマイムさ。しゃべっているのに、相手が話し止めてもわからなかった。後でスコセッシ監督に、今のテイクは大丈夫だった?と聞いても、彼は、何も聞こえないから検討もつかないって言うんだ。そのシーンがうまく行ったかどうかも分からない。でもうまくいくことを祈ろうって。でもそれが映画作りの魔法でもあるんだ。他の全ての要素を入れて、編集が終わり、音響ミックスが終わったら、まるで僕らが完璧に把握しているように見えるんだ。でも実際は本当に混沌としていたよ。
Q:スコセッシ監督との仕事が楽しいのはよく分かりました。その上で、監督ともう2本準備しているとも聞きます。そのひとつがフランク・シナトラの伝記映画だとも。それが本当なら、監督とどのように準備しているか教えてもらえますか?
L:本当のところ、彼と一緒に仕事できるならどんな機会でも楽しみにしてるよ。この記者会見だけの話だけど、彼と仕事できるならどんな機会でも飛びつくよ。でも特定のプロジェクトということなら、まだ決定事項ではない。基本的に、この業界はずっと素材をいじり続けるのが常で、延々と続いていく。そしてようやくある日、形にするのに耐える脚本が手許に残り、うまくいけば、監督も決まり、うまくいけば、他の要素も噛み合って、映画に青信号が点ることになる。彼はもうしばらくの間、脚本を練ってきたし、2人で多少は話し合ってきたけど、ある程度スタートラインが見えてきて、開始日程が出るまでは、本決まりとは言えないんだ。なので、まだもう1本彼とやると言える状態ではないんだ。それでも可能性は前向きに探っていきたいとは思ってるけどね。
Q:もう見ている方は、謎が謎を呼び、どんどん謎が積み重なっていくという物語の、見応えのある、大人で、知的な感覚を刺激してくれるスリラーですが、作品の謎を解くヒントを、主役のディカプリオさんから、全部とはわがままを言いませんので、ひとつだけ教えていただけませんか。
L:これだけは言える。この映画は、僕とスコセッシ監督が一緒に作ってきた集大成と言っていい。僕らはもう10年間、一緒にやってきて、共にいろんなことを経験してきた。そしてこの映画の役柄を可能な限り、極限まで押し進められたと思う。だから僕はこの作品を本当に誇りに思っている。この映画を世界に見せることができて本当にうれしい。そして実際、この映画を見る時に一番大切なことは、たくさんのひねりがあり、何が起きているかが観客に分からない状態であることが大事で、主役と他のキャラクターとの関係が皆目検討もつかない状況だというのが大事な映画なんだ。物語に身を任せるしかなく、うまくいけば、僕らが映画を作る際に感じた感情的な衝撃と同じくらい感じてもらえるかもしれない。だからあえて言うなら、シャッター・アイランドの島で起きていることは(多くを)知らない方がいい。映画館に足を運び、何も聞かないこと。僕ならそうするね。
Q:何もなくてもぽんって入って行けるわけですが、もう一回見ようと、リピートしたくなる映画ですね。
L:まるで僕がこの映画を、3回も4回も通うよう、恥も外聞もなく宣伝してるように聞こえるかもしれないけど、2度3度見る度に、新しい意味を発見できる映画だと、僕自身は、勝手な意見だけど(笑)、信じている。映画を毎回違う見方で解釈し、演技も全く違う解釈で見ることができる。この映画を1回以上見ることは、そうして楽しめると思う。でも見たくなければ、一度でも構わないけど(笑)。

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