OUTSIDE IN TOKYO
ABEL & GORDON INTERVIEW

アベル&ゴードン『ロスト・イン・パリ』インタヴュー

2. シナリオの執筆と実際に体を動かしてみるということの間で、
 ピンポンのようなやり取りを何ヶ月もやってから撮影に移ります

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OIT:ということは、現実の人々の生活から着想を得て脚本とかシナリオに落し込んでいく中で、ダンスとかコリオグラフィカルな動きを組み込んでいくという感じなのでしょうか?
フィオナ・ゴードン:ダンスというよりはジャスチャーというか、体の動きですね。例えば、『アイスバーグ』(05)にはダンスは出てこないのですが、非常に身体的な表現が豊かな作品だと思います。体の動きというのは言葉よりもニュアンスに富んでいると思うんですね。言葉というのは意味がそこで確定するわけですけれども、体の動きはアクシデント的な部分があって、そこが凄く面白いと思っています、意図しない表現というか。
OIT:撮影の前に動きは決めているけれども、事前に考えていく中でアクシデントが起きて、そうしたことを吸収していくということでしょうか?
ドミニク・アベル:シナリオの段階でかなり詰めて書いています、その身体的な表現も含めてかなり細かいところまで詰めてから撮影に入ります。体の動きがストーリーを担っているという風に考えているからです。実際に撮影に至るまでの間に、小さいカメラを使って自分達で即興的に色んなものを試していくんです。二年くらいかけて色々なことを試して少しずつ落し込んでいって、そして漸く撮影に移るわけです。ですからその時にはどういう風に動くかというのは、相当細かいところまで決まっていますけれども、元々は即興的なものから出ているので、多分ご覧になった方は即興性を感じるのではないかと思います。もちろん撮影の時に新しいアイデアが出てくることもありますので、そういうものは取り入れていく場合もありますが、基本的には相当早い段階で詰めてから撮影に移っています。色んなアイデアをトライしますけれども、やってみて上手くいかないものもありますし、上手くいったのでシナリオをそれに合わせて書き換えるということもあります。パソコンを使ったシナリオの執筆と実際に体を動かしてみるということの間でピンポンのようなやり取りがあって、それを何ヶ月もやってから撮影に移ります。
OIT:お会いしたら是非お聞きしたいと思っていたシーンがいくつもあるんですけど、時間も限られていますから、『The Fairy』で赤ちゃんが車の後ろに乗っていて二人がバイクに乗って追いかける、あのシーンでもの凄く爆笑したのですが、結構大変なシーンだったのではないでしょうか?
フィオナ・ゴードン:そのシーンの撮影は凄く面白かったんです、通常こういう場合は緑色の背景を使って撮るのですが、私達は手作り的な要素がとても好きなので、レトロなプロジェクターを使って撮影したんです。背景を見ながら私達も演技をしているので、そこで相互作用が生まれてくるんですね、技術の人達も、私達をそれに合わせて動かしていくので、やっていて凄く楽しいシーンでした。難易度はそれほど高くはないのですが、スタッフ全員の協力が必要な撮影でした。
OIT:現場で笑いは起きるのですか?
ドミニク・アベル:そんなに大爆笑していたわけではありませんね。やっぱり赤ちゃんがいるということで、たくさんの人が必要なシーンでしたので、あまりリハーサルが出来なかったシーンの一つでした。トランクのところにはナイロンの糸があったりして非常に動きも複雑でしたし、バイクはタイヤの着いた板の上に乗っかっていて動くようになっていて、カメラも板の上で動いていて、自転車の競技をフォローするような感じで動いていました。それから赤ちゃんが落ちた時に危なくないように控えている人もいましたから、色々な人達が右往左往していて、もの凄く音もたくさんありましたね、プロジェクターの音とか。あとフィオナが赤ちゃんに手が届かないと叫んでいたり(笑)。ですから大笑いというわけではありませんが、大きな舞台をみんなで作っているような感覚でした。
フィオナ・ゴードン:撮影中にあんまり笑うっていうことは無いんです。時間が限られていますし、やらなければならないことがたくさんありますし、私達は船の船長みたいな役回りを負っていますから、とても真面目に集中してやっています。

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