OUTSIDE IN TOKYO
ABEL & GORDON INTERVIEW

アベル&ゴードン『ロスト・イン・パリ』インタヴュー

3. シナリオを書く時は、これは撮影出来ないから止めようということは一切考えずに、
 思った通りに書いて、後で実際にどうやって撮ろうかということを考えます

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OIT:そうしたスクリーン・プロセスはお二人の映画で、必ずいい場面で結構使われていると思いますが、今回の『ロスト・イン・パリ』でもエッフェル塔の下の映像はそうですか?
ドミニク・アベル:実はやりたかったんですが、床には投影が出来ないんです、下にパリの街が見えるという設定をやりたかったのですが、それが出来なくて、ここではグリーンの背景スクリーンを使って撮影しました。
OIT:三人が塔の上の方に座っている向こうの背景の方もですか?
ドミニク・アベル:そうですね、それもグリーンのスクリーンです。そのシーンのバーは鉄に見えていると思いますが、実は木製なんです。グリーンのスクリーンで撮って、実際にエッフェル塔の二階部分から撮った映像を後からコンピューター処理で被せています。
OIT:なるほど、スクリーン・プロセス自体に拘りがあるわけではなくて、こういう画にしたいという中で最適な方法を採用していくのですか?
ドミニク・アベル:出来るだけ使いたいとは思っているのですが、私達はとてもポエティックなアイデアとか、とんでもなく突飛なアイデアを思いつくものですから、後でそれを具体化する方法を見つけなければなりません。例えば、フィオナが川に落ちる場面がありますけれども、川底まで沈んでいきますよね、でも実際には体って浮いてしまうので、そこまでちゃんと落ちるように重しを着けなければいけなかったんです。シャンパンの瓶も浮いてますけれども、あれは実際には空にしないと浮かないんですよね。
フィオナ・ゴードン:私達が実際シナリオを書いている時には、それをどうやって撮影するかは分からないまま書いているんです。その書いている時点でこれは撮影出来ないから止めようとか、そういうことは一切考えずに、とにかく思った通りに書いて、その後じゃあこれをどうやって実際に撮るかっていうことを考えるんです。そこが非常に挑戦であり、面白い部分なんです。それで今までに全くないような撮り方を思いつくこともありますから、そこが非常に面白いところだと思いますね。
ドミニク・アベル:観ている人達もこんなことは有り得ないと分かっていつつ、それを面白がってくれるという観客の皆さんとの共犯関係を楽しんでいるところがありますね。演劇の世界ですと完全にリアルな世界を再現出来るわけではありません。例えば、駅とか電車のシーンで実際にそういう場を作れるわけではありませんので、そういうふりをするということが重要になってくる、そこでクリエイティブである必要が出て来ます。ですから観ている人たちが、私達が何をやろうとしているのかを理解してくれているかどうかが大事なのですが、その中でリアルではない状況もあり得るわけです。そういう雰囲気を映画でも出したいと思っています。ですから必ずしもリアリズムを追求しているわけではありません。
OIT:お二人の役割分担みたいなものはあるのですか?
フィオナ・ゴードン:特に役割分担というのはなくて、お互いの目を見て、ここはあなたがいく、私がいくみたいな感じでやっています。
ドミニク・アベル:私たちは二人とも凄く頑固なので、二人とも何でもやりたがる、フレーミングとか衣装とか音楽の選択とか、全部やりたがるのでしょっちゅう喧嘩しています(笑)。本当かどうかは分かりませんが、日本では割と共同作業がしやすいという風に聞いたことがあります、誰がこのアイデアを見つけたっていうことが大事なのではなくて、それがいいアイデアかどうかを重視するという風に聞いたことがあります。私たちは共同作業というのを学校で学びました、実際に三人で脚本・監督・出演をした映画もありますので、そういうやり方を学んだという感じですね。

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