OUTSIDE IN TOKYO
ALEXANDER PAYNE, GEORGE CLOONEY & SHAILENE WOODLEY INTERVIEW

アレクサンダー・ペイン、ジョージ・クルーニー&シャイリーン・ウッドリー
『ファミリー・ツリー』インタヴュー

2. オーディションについては、全く覚えていません(シャイリーン・ウッドリー)

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シャイリーン・ウッドリーは、アメリカでは「ザ・シークレット・ライフ・オブ・ジ・アメリカン・ティーンエイジャー」、「女検死医ジョーダン」、「The O.C. 」といった人気テレビ番組への出演で知られる、21歳にして既に16年のキャリアを持つ女優だが、監督のアレクサンダー・ペインは、彼女の出演作を一度も見たことはなく、長女アレクサンドラ役はオーディションによって決められた。ペインは、そのオーディションでの彼女の演技に深く感動してキャストを決めたのだというが、シャイリーン自身は、その時のことを全く覚えていないのだと言う。
オーディションについては、覚えていません。本当に覚えていないんです。でも覚えていないというのはそれがうまくいったということのしるしではないかと思います。記憶にないんです。たぶん、私はその瞬間に存在を発揮したということだと思います。この映画のなかには撮影したことを覚えていないシーンがいくつかあります。他の人の撮影風景は覚えていても、自分がそのシーンで何をやったかを覚えていないんです。そういう記憶があるかどうかは、本当に存在感を発揮できたかを判断する決め手になると思っています。
16年のキャリアは伊達ではない。アレクサンダー・ペインの脚本や、アレクサンドラという役柄について語るシャイリーンの言葉には成熟した響きがあり、それは、本作におけるジョージ・クルーニーが演じる父親とシャイリーンが演じる長女の関係とも呼応しているように見える。その事自体が、キャスティングの成功を物語っているといっても良い。
映画の起用が決まるまで原作(カウイ・ハート・ヘミングスの小説「The Descendants」)は読んでいませんでした。この役について、私がやることはそれほどなかったんです。なぜならアレクサンダーの脚本が素晴らしかったからです。たいていの脚本は90ページ程度ですが、この映画は300ページありました。長女のアレクサンドラは、ごく普通のティーンエイジャーですが、不安な時期を経験しています。彼女は子供の時に自分とお母さん(エリザベス)との関係が、母子というよりは親友に近いものになるだろうと思っていました。それに、お父さんとは隔たりがあって、そこにいるにしても家族と仲が良いわけではありません。そのため、彼女は心に壁を作って閉じこもり、自分で自分を守っているような状態でした。だから、とても小さい時に独立したんです。その後でこのストーリーが始まると、悲しい展開に巻き込まれた彼女はもろい面をさらけだし、自分の壁を壊すことになります。生まれて初めて、一人ではなくて人に依存し、共依存する立場におかれます。つまり、彼女は機能不全に陥った家庭と10代を経験しているごく普通のティーンだと思います。
自分も十代の時に不安な時期を経験したというシャイリーンの言葉には、この役柄への共感と共に、過去に対する冷静な距離感が感じ取れる。それは、現在の彼女の“女優”というステイタスの捉え方にも現れている。
この仕事を始めた時はとても小さかったんです。5歳でした。両親は教育者でした。私を女優にするつもりはなくて、たまたまそうなってしまったんです。私は演技のレッスンを受けていたんですが、エージェントから母に電話が来て、私のことを面白そうだと言ったんです。そういう始まり方でした。子供の時に、“大きくなったら女優になりたい”とは思っていませんでした。教師か心理学者になりたかったんです。いまもその気持ちはもっています。本当に役者になりたいと思ったことはありません。アーティストになりたいんです。この業界にいると自分が商品のような気がすることがよくあります。注目を集めるぐらい良い演技をしたとか、人の注意をひいたりすると、人間ではなくて、突然、ポスターに顔が載る人のようになるんです。そういう人にはなりたくないですね。
ここまでしっかりしていると、将来的には監督業に進出してほしい、という気すらしてくる。本作で、危機を迎えた父親に<守護神>のように寄り添う彼女だが、実際、父親のマットは娘に教えることよりも、娘から学ぶことの方が多いように見える。
ある面では間違いなくそうですね。・・・ティーンエイジャーというのは、彼らの‘実際’が本当か架空かに関係なく、本人は何でも知っていると思っているので、普通の大人よりも大人っぽく見えるんじゃないかと思います。なぜなら大人は自分の殻のなかに閉じ込もったり、隠れたりすることが多いからです。アレクサンドラが父に教えることは、人との関わりだと思います。彼はいつでも後ろに引っ込んでいて、一歩離れたところにいる人です。映画では彼が自分のそういうところを後悔する場面があります。娘は率直で前向きなので、父も娘に負けてはいられないと変わらざるをえなくなり、それが結局は二人の間に親密な関係を築くきっかけになります。
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