OUTSIDE IN TOKYO
ALEXANDER PAYNE, GEORGE CLOONEY & SHAILENE WOODLEY INTERVIEW

アレクサンダー・ペイン、ジョージ・クルーニー&シャイリーン・ウッドリー
『ファミリー・ツリー』インタヴュー

5. 低予算。スケジュールを守る。稼ぐ映画。
 これらのおかげで、僕は映画を作り続けることができている(アレクサンダー・ペイン)

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現場での仕事が大嫌いだという人見知りの映画監督も珍しくないこの業界において、‘人間作り’に長けたペインは、そうでない監督よりも随分得をしているように見える。多くの俳優たちが、一緒に仕事をしたい監督としてアレクサンダー・ペインの名を挙げているのも頷ける。
多分、僕が映画作りをすごく楽しんでやっているから、役者も楽しいんだろう。プロデューサーやスタジオの連中が来て僕を脅かそうとしても、僕は、“こわい、こわい”と言うだけだからね(笑)。そんなの真面目に受け取る人はいないよね?映画を撮るのは本当に楽しい。一生懸命に仕事をしているが、同時に思いきり遊んでいる。僕は映画が大好きで、映画を作ることができてとても運がいいと思っている。役者にもこの気持ちが伝わるんじゃないかな。
そして、ハリウッドという巨大産業の中に身を置きながら、自分の作りたい映画を作り続ける、そのコツについて、こんな風に語っている。
低予算。スケジュールを守る。稼ぐ映画。これらのおかげで、僕は映画を作り続けることができている。めったにないことだよ。僕のような人は何人かいるが、今のアメリカ映画では少ないと思う。大人向けの現代のストーリーを作る人としてはほとんどいない。僕たちは作品をある程度、芸術面で管理できる。コツは予算を抑えることだ。最近では、『ザ・ファイター』(10)を考えてほしい。予算がどれぐらいか知らないが、1400万ドルぐらいかな。『ブラック・スワン』(10)は1200万。本作は、2200万ドル。こういう低予算だと、スタジオが多国籍企業のボスから受ける“映画をヒットさせなければならない”というプレッシャーは普通より少ないはずだ。予算が肝心なんだと思う。それと、映画監督としてとても厳しく規律を守っているんだ。僕は仕事がしやすい相手だと思う。というのは、契約による最終編集権を持っているから、彼らのアイディアにもっとオープンになれるんだ。「どうぞ、どんなお考えですか?」と言える。彼らから20のアイディアを出されて、そのうち1つでも映画の役に立てば運がいいと思うし、彼らは自分のアイディアを聞いてもらえたと思うよね。
2012年5月現在の為替レートで換算すると、『ザ・ファイター』の1400万ドルは約11億円、『ブラック・スワン』の1200万ドルは10億円未満、『ファミリー・ツリー』の2200万ドルは約17億円である。確かに、このクオリティの作品をこの予算で実現してしまうのだから、メジャー・スタジオからの信頼が篤いのも頷ける。そして、これほどの作品をものにしているペインが、アスガー・ファルハディの『別離』(11)を観て、この映画には、自分の映画に欠けているものが濃厚に存在している、それはリアリティである、というのである(ALEXANDER PAYNE FILM COMMENT INTERVIEWより)。夢の仕事についた、かつての映画少年の飽くなき夢の探求は、これからもまだまだやみそうにない。

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