OUTSIDE IN TOKYO
ALEXANDER PAYNE, GEORGE CLOONEY & SHAILENE WOODLEY INTERVIEW

アレクサンダー・ペイン、ジョージ・クルーニー&シャイリーン・ウッドリー
『ファミリー・ツリー』インタヴュー

4. バカだと思われるんじゃないかとすごく不安だから、
 もっと知的な映画にしようといつも頭をひねっている(アレクサンダー・ペイン)

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クルーニーがアレクサンダー・ペインに全幅の信頼を寄せるのには、それなりのわけがある。クルーニーとペインは、“観客”の知性についての考え方が一致しているのだ。ペインは、こんな風に語っている。
ジョージとは、観客の知性が高いという話をよくしている。だからといって、観客の頭のよさを想定しているということではなく、本当に僕よりも頭がいいと思っているんだ。僕はバカだと思われるんじゃないかとすごく不安だから、もっと知的な映画にしようといつも頭をひねっている。
この言葉は、昨年来日した東欧の巨匠の口から出た言葉を思い出させる。以下に、その時の記事から引用しておくが、この言葉の主はタル・ベーラである。
「観客は非常に知的で賢い、そうであるとすればやはり映画の作り手としてはベストを尽くして作品を作らなければいけない」
このことは、アレクサンダー・ペインとタル・ベーラが想定している“観客”のイメージが同じであるということ、そして、この二人が“映画”と呼んでいるものが同じ種類の“映画”であることを雄弁に物語っている。ペインは、さらに続ける。
僕は友達や自分が見たいと思う映画――自分でクールな映画、知性があると思うもの――を作っている。実際に観客に参加してもらえそうな映画的効果を生み出してね。ビリー・ワイルダーがよく言っていたように、「観客には‘2足す2は?’とだけ言って、答えの‘4’を言ってはダメ」なんだ。多くのアメリカ映画というか、すべての映画だが、特にアメリカ映画は、‘答えは4だ!’‘4だ!’と言いすぎている。それは映画じゃない。
監督業からの引退を公言し、これからは後進の指導とプロデュース業に心血を注ぐと語った東欧の巨匠と、米メジャー・スタジオからの信頼も篤いアメリカを代表しつつある映画作家が、同じ“映画”を夢見ているという事実に、未来の“映画”の可能性を感じることができないだろうか?

もちろん、二人の映画作家が夢見る”映画”の中には豊かなグラディエーションが存在している。ペインの場合、その”映画”を支えるコアにあるのはやはり”脚本”だろう。シャイリーンは、ペインの脚本について以下のように振り返る。
これまで出演した多くの映画やテレビで、台本に“アレックス泣く”と書かれているのに、台詞を読んでも少しも感動しないことがよくありました。“どうやって泣けばいいの?この台詞ではそういう気持ちにはなれないわ”と思ってしまいます。でも、アレクサンダーの台本は特にこの映画の場合、とても本物らしく、その瞬間がリアルなので、泣かないではいられなかったのです。私たち役者はその場にいて、監督の言うことや判断に従ってそのまま演じる以外に、あまりやることはなかったのです。
リアリズムに拘り抜いた脚本の先には、ペイン独特のチーム作りが待っている。シャイリーンが言葉を続ける。
出演者は全員、撮影が始まる1ヶ月前には現地へ行って、親しくなり、絆を築くようにしました。アレクサンダーは‘人間作り’が得意です。これは私が勝手に考えた造語ですけど!監督はリアルなものにすることや本物の瞬間を見つけることが得意で、それはジョージも同じです。みんなで仲良くなって島の観光に出かけ、そこの文化を知り、ハワイの人々の雰囲気をつかみました。そうやって一緒に出かけながら、親しくなっていきました。撮影に入ってからは、週末にはニック(シャイリーンのボーイフレンド役)とハイキングやカヤック、シュノーケルをしました。休みの時でも一緒に行動していたんです。

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