OUTSIDE IN TOKYO
Carla Simón INTERVIEW

カルラ・シモン『悲しみに、こんにちは』インタヴュー

2. 私は観客とのゲームを楽しんでいます

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OIT:お話を伺っていると、今まで短編でやってきたことが徐々に構築されていって、ここに繋がっているというのがとてもよく分かるのですが、最初にバルセロナの映像の学校に行った時は、ただ映画を作りたいという感じだったのか、あるいは、ご自身のストーリーを語りたいというのが最初からあったのでしょうか?
カルラ・シモン:その時は、ただ映画が作りたかったんだと思います、『LIPSTICK』を撮り終えるまでは自分に起きたことを書こうとは思っていませんでした。本作の題材である、子どもが“死”と直面する、その仕方とか捉え方とか、そういうものを深めていくことになったのは『LIPSTICK』を撮り終えてからのことです。というのも、最初は、私の母親の話を書きたかったんです。でも母親のことを実際に知らないから難しかった。だから『LIPSTICK』を撮った後で、母親との関わりで自分の人生に起きたことについて書きたいと思ったんです。それは自分が実際に生きたことですから、ちゃんと書くことが出来るはずですよね。それで、2013年に『LIPSTICK』を撮り終えた後、2014年に本作の脚本を書き始めたんです。

OIT:この映画は、カルラさんにしか作れない映画であると同時に、映画的にすごく面白いんですよね。色々素晴らしいところはあるのですが、まずストーリーに謎が散りばめられていて、映画の全体の流れの中で、ミステリーが次々にリレーしていくような感じがあります。脚本の段階でそういうことを考えて作られましたか?
カルラ・シモン:私は観客とのゲームを楽しんでいます。何かを見る時に実際の人生において誰かが全部を説明してくれることなんてありませんよね。通常人は、例えば家族の関係を見る時、どういう関係性なんだろうと、小さなヒントから自分で理解する努力をします。映画を見る時も、どんな家族なのかっていうのを、現実と同じリアルなプロセスで発見してほしかったのです。それで、すごく興味深いゲームになっているのだと思います。実際の人生では、この家族の誰が死んでねとか、そういうことは言ってくれないっていうことをリアルに味わってほしかったのです。

脚本は、緻密にバランスをとる必要があって、非常に複雑なプロセスでした。まず観客がこれを発見していくだろうかとか、フリダがどう感じているか、病気のことをどこまで明らかにしていくか、どういう情報を与えるかといったことを綿密に構成する必要がありました。撮影を実際にしてみると、ある時はあまりにも明らかになりすぎると感じたので、今度はその情報を少し隠してみたり、その逆のことがあったり、フリダの感情にしても同じようにバランスを取っています。その後の編集の段階でも同じようなプロセスを辿って、観客がどう感じるかということを常に意識しながら、映画作りの時間を通してずっとそんなゲームをしていたのです。



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