OUTSIDE IN TOKYO
Carla Simón INTERVIEW

カルラ・シモン『悲しみに、こんにちは』インタヴュー

5. 『ミツバチのささやき』と『カラスの飼育』は、最大のインスピレーションの源です

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OIT:最後のベッドのシーンで泣き出してしまうところは、監督の演出意図通りだったのですか?
カルラ・シモン:そうですね、“最後に泣く”というのは脚本の最初のバージョンから書いていたことで、実際に母が死んだ日、私は泣かなかったことを覚えています。それがずっと罪悪感になっていて、少し大きくなってからある本を読んでいて、主人公のお婆さんが泣く場面ですごく泣いてしまった。他人の本の話で泣くのに、自分の母親が死んだ時に私は泣かなかったという罪悪感に、しばらくの間、苦しめられました。でもその後、養子縁組をしてくれた養母が、私がある日ベッドの中で遊んでいた時に泣き出したことがあると教えてくれたんです。養母は、何で私が急に泣き出したのか分からなかったそうです。それは、“1993年、夏(原題)”ではなくて、その1年後、2年後のことだったのかもしれない。実際、私はずっと泣かなかったわけではなくて、結構泣き虫だったわけですけど、ただ、その日には泣かなかった。それを象徴的に書くことで映画の美しいフィナーレになると思って、そのシーンを書いたのです。

OIT:最後にお訊きしたいのですが、音響がとても良かったですね。ロケーションも素晴らしくて、石造りの家でしたので音響が良かったのだと思うのですが。音は同時に録音したものなのか、あるいは後で付け足したりしているのでしょうか?
カルラ・シモン:まず石造りの家というのは照明的にも音響にとっても最高ですね。そして、“田舎の夏”というのも音響的には最適でした。ですから、雰囲気を作るための音や効果音は、全てその場で撮っています。後から録り直したり、重ねたりしたものはありません。ただ、口頭で私が演出をする声が入っていたりするので、その部分は後で編集して消す必要がありましたが、録音自体は全てその時に録ったものです。シーンを撮り終わった後で、何回かお芝居をやり直す場面も結構ありましたが、そうした場合も、その場で音を録っています。

OIT:ジャズもその場で流していたものですが?
カルラ・シモン:“1993年、夏”の後、私に弟が出来るんですけど、ジャズは、その弟が作ったものなんです。あの“アナ”の実の妹も映画に出ています。彼女は女優で、髪の毛がカールしている若い叔母の役を演じています。そして、あの音楽自体は後から付け足したものです。スタジオで一生懸命作って、その後、音源を家に持ち帰って、あの家の外で鳴らして、それを録音したのものです。リアルな音の響きにしたかったので。ただ、冬だったので夏の音にはなりませんでしたね(笑)。

OIT:まさに、あの場で響いてるように聴こえて、素晴らしかったです。この映画を観て、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』(73)を思い出しましたが、意識されていましたか?
カルラ・シモン:私の大好きな映画です。『ミツバチのささやき』と『カラスの飼育』(76)は、最大のインスピレーションの源です。



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