OUTSIDE IN TOKYO
FUJI TATSUYA & MINORIKAWA OSAMU INTERVIEW

『人生、いろどり』は、徳島県の上勝町で実際にあったサクセスストーリー(年商2億円の事業に成長した、高齢の女性たちが中心になって起こした葉っぱビジネス)をベースにした、年老いて家族からも疎まれていく女性たちが、やり甲斐のある仕事を契機に自己を再発見していく女性たちを描いた女性映画である。“葉っぱビジネス”とは、料亭などで使われる刺身などの“つま”に使う“葉っぱ”を専門に扱うというニッチなアイディアの事業化に成功したものだが、この仕事は、“葉っぱ”を単に拾って集めるのではなく、苗木から”育んでいく”という本質的に“女性的”な要素が大きく介在している。その仕事は、子供を生み、育み、次の世代へと命を繋げていく女性たちの営みそのものと重なる。

しかし、それは作品を見ればわかることなので、インタヴューではこの映画を見てとても気になったシーンを中心に御法川修監督と俳優の藤竜也さんにお話を伺った。御法川修監督は、次回作『すーちゃん まいちゃん さわ子ちゃん』(タイトルが似ているのは、脚本を『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の田中幸子が手掛けているからだろうか?)も期待される若手のホープ、藤竜也さんは、言わずと知れた日本映画を代表する名優である。藤竜也と富士純子という、日本映画を代表するふたりの俳優が作り出した、言葉では説明をするのが難しい色気が立ち上がるシーンは、まさに“映画”が立ち上がるその瞬間を捉えたものだ。この瞬間を見るために、『人生、いろどり』という映画を見ても損をすることはないだろう。

1. 人生の経験を積んだ男と女の活劇を作ること(御法川修)

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OUTSIDE IN TOKYO(以降OIT):徳島の上勝町という町を舞台にした葉っぱビジネスのサクセス談は、ドキュメンタリー番組などでも話題になっていたので、その話をどういう風に料理するのかなと思って拝見しました。そうするとサクセスストーリーというよりは、この3人の女性の人生を描いている女性映画である、そして、家族からもあまり必要とされていない、ちょっと疎まれているような女性達の物語でした、そこが面白いと思いました。監督として、そういう実話を映画化する上で最初に考えたのはどういったことでしたか?
御法川修:もちろん僕だけじゃなくて、今回の製作チームが一丸となって考えたのは、今本当に褒めて頂いたみたいに、アメリカ映画でも若い主人公達だけの話じゃなくて、名優達のそれぞれの人生を刻んだ人生観を語る映画があったり、ヨーロッパでもそういう映画がたくさんあるのに日本ではなかなかそういう映画がないので、今回はこういう題材を借りて、65歳以上、高齢者って言われてる、世の中の経済活動に参加出来ないような人達が働いてお金を得る、しかも成功してるっていう町の実話を借りて、本当に人生の経験を積んだ男と女の活劇を作ることが出来るっていうところに、凄く魅力を感じました。
OIT:藤さんは脚本を読まれて、どういう部分に惹かれたんですか?
藤竜也:実は僕ね、映像化するというただそれだけのものじゃなかったんです。映画としてこれは成立するなという気があったわけです。それじゃなかったらやりませんよ、面白くなかったら僕やらないもんね。仕事はやっぱり楽しくなきゃいけないですから。
OIT:今回は、藤さんが今まで何度も共演されてきた吉行和子さんが主演ですね、かつて、『愛の亡霊』(78/大島渚)などで共演されていますけれど、何か特別な感覚っていうのは湧いてくるものですか?
藤竜也:安心感だね、『愛の亡霊』だけじゃなくて何本もやってるんですよ、不思議に縁がありましてね。(他の俳優さんとは)滅多にないことだけどね、5年か6年に一本ぐらい。僕で51年目だからね、吉行さんなんかもうちょっとキャリアが長いでしょう、5年に一本だって10本、別に企んでるわけでもなく(笑)。映画で夫婦役だとか、あるいは『愛の亡霊』みたいに愛人関係みたいなのやるわけだから、やっぱり幻想の世界、過去と一緒に生きてる人間だから、生まれ変わって今度は老夫婦やるんだから安心感はありますよ。
OIT:演じていて、過去のシーンが思い浮かぶようなことはありますか?
藤竜也:それはない。僕の知ってる範囲では僕も含めて、こうやろうとか、ああやろうとか、そんなことは話さないもんなんですよね。言葉発した時から、現場に入った時から、もう相手がどんなこと考えてるのか、どんな作りをしてきてるのか、なんとなく分かる。(だけど実際は)どうでるかも分からない、お互いにそうです、そこからスリルが生まれる、空気の緊張感が生まれる。そういった意味で何遍も現場で生きてきた俳優だから、それはやっぱり映画にとっては有利に働いたかな、とは思う。やっぱり(本作で描かれたような)ああいう伝統的な、古い家族関係を誰だって壊すのは怖い、それは誰でも同じだけど、背に腹は代えられなくて何とかしなくちゃいけない、そういうところは(画に)出たと思いますね。

『人生、いろどり』

シネスイッチ銀座ほか、絶賛公開中

監督:御法川修
プロデューサー・脚本:西口典子
撮影:石井勲
美術:金勝浩一
ヘアメイク:吉野節子
照明:大坂章夫
コスチュームディレクター:安野とも子
音楽:水谷宏実
整音:矢野正人
出演:吉行和子、富士純子、中尾ミエ、藤竜也、平岡祐太、村川絵梨、戸次重幸、キムラ緑子、大杉蓮、螢雪次朗

© 2012『人生、いろどり』製作委員会

2012年/日本/112分/カラー
配給:ショウゲート

『人生、いろどり』
オフィシャルサイト
http://www.irodori-movie.jp//


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