OUTSIDE IN TOKYO
KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

藤本楓『サボテンと海底』インタヴュー

3. 大学生の時は現場が嫌いでしたが、今は楽しめるようになりました

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OIT:この映画自体、現場から始まって現場で終わる映画ですけれども、撮影現場が結構お好きなのかなと思いましたが、いかがでしょうか?
藤本楓:今は現場が好きですね、大学生の時は嫌いだったんですけど(笑)。映画と言っても大きな予算の作品と低予算の学生映画とでは大分テンションが違いますし、私がやりたいのはこういうことだったっけ?とか、何でこの人はこんなに意地悪なことを言うんだろうとか、一時期は現場をさけて、作り物だけ現場に納品するという時期もあったんですけど、最近は現場を楽しめるようになりました。以前に比べると、コミュニケーションが取れるようになってきたのかもしれません。

OIT:今回の作品では、キャメラのポジションはどういう風に決めていかれましたか?
藤本楓:距離感については相当意識していて、脚本の段階、ロケハンの前から、大体これくらい、登場人物と私たち、見ている観客との間に距離感を取りたいっていう感覚はあって、カメラマン(吉田淳志)さんとは事前にカット割の打ち合わせをしっかりして、お芝居を見てから調整することもありましたけど、基本的には事前に決めてから撮影に臨みました。CM現場の場面に関しては、画コンテをかっちり作って、それに基づいて撮っていきました。といっても、CM撮影の現場に詳しいわけでもないので、助監督さんから指導をうけて、真似して描いて…という感じでした。

OIT:この作品の中に、先程の“監督”と共に三人組の制作スタッフが登場しますが、それぞれキャラクター造形がとても良く出来ていて楽しく拝見しましたが、その辺は、事前にかなりしっかりとしたイメージがあったのか、あるいは、現場で俳優さんたちと作り上げっていったのでしょうか?
藤本楓:脚本の最初の段階では、何かこの登場人物、個性がないね、とつつかれるような人物造形だったんです。“学生監督”のほか“学生プロデューサー”と “学生助監督”がいて、私はプロデューサーや助監督にそこまで個性を求めていなかったんですけど、脚本指導の最中に一日だけ参加した現場でヒロイン役をされていたのが小野莉奈さんで、今回、その方にプロデューサー役をオファーしました。小野さんはすごく素敵な方で、とても綺麗な顔立ちをしているのに、飾り気がなくて、よくガムを噛んでぼーっとしてたりとかするんですよ。私は、その時は、制作部として呼ばれてたんですけど、制作部チーフに教えてもらっていたトイレに小野さんを連れて行ったら、そこのトイレが使えなくなっていて、急遽、近くにあったパチンコ屋さんのトイレに連れて行かなくてはならなくなったんですけど、私の偏った知識で、「小野さん、パチンコ屋さんのトイレって、メチャメチャ綺麗なんで安心してください、今からお連れしますから」って言って連れて行ったら、結構汚いトイレだったんです(笑)。それで私は申し訳なくて、すいません!って言ったんですけど、小野さんは嫌な顔一つせず入っていって、全然大丈夫ですよ!って笑顔で言ってくれて、すごく素敵な方だなと思って。“女性プロデューサー”は小野さんかもしれないと、途中から彼女をイメージして脚本を書き換えたんです。そうしたら、特別何かをしなくても、小野さんが「きっとこの人物はこうに違いない」っていうのを、動きなしでも醸し出してくれたり、言葉にしてくれたりして、凄く助けられました。

助監督役の若林さんに関しては、元々私の脚本では無個性に造形してたんですけど、脚本を書いている途中で若林さんを見つけて、助監督を若林さんがやったら監督を食うぐらい面白い役になるんじゃないかとて思って、これも勝手に若林さんをイメージしながら脚本を書いたんです。そうしたら見事に、監督役の大友(一生)さん、女性プロデューサー役の小野さん、助監督役の若林さん、三人揃って第一希望で役をオファーした方々に出て頂けることになりました。結果的に、三人とも自分の想像を遥かに超えて現場でも色々やってくださって、本当にキャスティングに恵まれたなと思っています。

OIT:小野莉奈さんはとても自然な感じで、太々しさとチャーミングさが同居した今時の“学生映画人”を演じていて大変素晴らしかったですが、監督役の大友さんも良かったですね。
藤本楓:ありがとうございます。大友さんは、私が昔入った現場で、オーディションの段階ですごい面白い役者さんがいるなと思って、監督の耳元で、「絶対彼を選んだ方がいいですよ、」と囁いたりしていました。彼に関しては、ndjcに応募する最初の脚本を書く段階で当て書きしていました。

OIT:テイクは結構粘って撮りたい方ですか?
藤本楓:時間が限られていたということもあるかもしれませんが、おそらく、そうじゃなかったとしても、1、2テイクで決めていく方かなと思うんです。実際に選んでいるのも1、2テイク目が多いんですけど、例えば、技術的なこととか、タイミングとか、複数の役者さんが絡むお芝居とか、そういう場合は必然的にテイク数が重なってしまったんですけど、基本的には1、2テイクで収めていました。
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