OUTSIDE IN TOKYO
HIGUCHI YASUHITO & SUGITA KYOSHI INTERVIEW
【PART2】

杉田協士&boid樋口泰人『ひとつの歌』インタヴュー【PART1】

4. 場所に関しては、”有り無し”の感覚があって、
 ロケハンはだいたい一発で決まる(杉田)

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OIT:じゃあ、みんな行ったことがある場所っていうことですか?
杉田:ちょっと頭のおかしい話になりますけど、だんだん地図を見るだけで分かるようになってくるんですよね。ここにきっとあるみたいな(笑)。
OIT:それは一種の空間把握能力みたいな。
杉田:分かんないんですよね。なんかよく覚えてるのは樋口さんが編集された黒沢(清)さんの『ココロ、オドル。』(04)の時に、黒沢さんにまず湖どっかでやりたい、明日那須の方に行ってきてくれって言われて、分かりましたって言ったのに、富士五湖の方行ったんですよ。それで結果的に本栖湖に行っちゃった、なんか絶対そっちだって感覚があって。那須って言われてるのに(笑)、本栖湖に行って写真撮ってきて、黒沢さんに、行ってきました本栖湖に、本栖湖が凄くいいと思いますって言ったら、怒られて。昔、『蜘蛛の瞳』(98)かなんかで本栖湖でロケしてて、俺はよく知ってるんだよ、本栖湖は!って言われて。それで、写真見せたら、見ないよそんなもん、みたいな。一回でいいですから一緒に行きましょうって無理矢理連れて行ったら、ここだって(笑)。ほらやっぱりってことありましたね(笑)。まあその後、一応、ちゃんと那須も見に行って、いくつか見せたんですけど、やっぱり本栖湖に決まった。
OIT:何かを決める時に直観的に決める、判断してるんですかね。
杉田:その街に流れてたりする時間、ちょうど今、今日ここに車で来てちょっと離れた所のパーキングに停めたんですけど、boidの事務所に向かう途中でいい所にあるなっていう感覚があるんですよね。ここに事務所がある、そこの道を歩いて来たら、自分には何でそういうのあるんだろうなって思いながら、有り無しがあるんですよね。
樋口:逆にその、俳優の演出っていうか、俳優さん達が演技をして、その演技がいい悪いっていうか、風景ではなくて俳優達の演技を、このカットはこれでOKっていう、自分の中で決める基準みたいなのは?空間を決める時って予め何か感覚としてここっていうのがあるとしたら、その中で動いてる人達の動きっていうのは予め何かそういう感触みたいなものがある?
杉田:そうですね。
樋口:空間を決めた時にもう俳優達の動きもあるっていう感じ?
杉田:佇まいの感覚だけ持ってるって感じです、撮影に入るまでは。何となく持ってて、実際にやっぱり役者さんをその場所に立たせると、ふわって見えてくるんで。事前に動き分かってないです、写真屋さんの前のやり取りとかも。彼女が窓を拭いていて、親子連れが来て挨拶してる所に剛が来るっていう流れに今なってますけど、頭の中では女の子と剛が立ち話をしてるところに街のいつも会ってる人たちが入ってくるっていう感じでした。
樋口:それは例えば当日の撮影の中では、どういう風にしてそうなっていくわけ?その元々頭の中にあったものからスタートする?
杉田:まずここで芝居するっていうのは何となく決まってるんですよ、この位置でっていう、そこにその人達が立ってるのを少し離れた所から見てると浮かぶんですよ。
樋口:元々頭の中にあったのを演技してもらった上で、これじゃあ違うって思うんじゃなくて、その場に立った時に別のアイデアが浮かんで、それからスタートするっていう。
杉田:そうですね。
OIT:リハーサルみたいなものはやらない?
杉田:あ、やりますね。
OIT:事前に?あるいはその場で?
杉田:あー、事前のリハーサルとかは一切しないです。その人達に実際に現場に立ってもらう。特にパーティーシーンとか、あの人数が集まらないと何も想像が出来なくて、実際集まって、ちょっと離れた所からこう見てると何かこんな感じかなみたいなのが浮かんできて、じゃあ一回練習しますって、僕がばーって動きをつけて、やってみて、一回やったところで撮影の飯岡さんにこれですって言って、じゃあカメラここかなとか、そんな順番でした。
OIT:カメラのポジションは撮影の飯岡さんが決めてるんですか?
杉田:はい、飯岡さんが。
OIT:それで意見が対立したりとかっていうことはなかったですか?
杉田:対立しないですね、僕にあんまり浮かんでないんで。あと、そういう風にした理由っていうのは、常々思うんですけど、あるものを作る時にある長さの期間があったとして、このポイントだけを見た時に、一部だけを見てこれがいいかどうかの判断って、本当?っていう(笑)。端から見ててもうちょっとここ修正してよって修正も全部していったことで、そのスタッフの人が最初に持っていた一つの軸が、ぐちゃぐちゃになるんじゃないかっていう、思いがあったんですよね。その人にはその人の『ひとつの歌』の台本読んだり、みんなと関わっていく中でのこの映画はこうだっていう一本の軸がぼんやりでもあると思うんで、それが正解かどうかっていうのは、それで全部やるしかないっていう、本当に全部のシーン撮った時に初めて分かるんじゃないかなっていう思いがあったんで。
樋口:さっきの空間の中の佇まいで、杉田君がこれって思ってることと、でもそれをカメラが撮るわけじゃない。それが映画になった時の見え方っていうのと、杉田君がその場で見ていた全体像っていうのは、また違うことにもなる。そこに生まれるギャップみたいなものはあまり気にしないですか?その場の全体像がこれでOKなら、あとはそのカメラマンの方法に任せるという話だけど、例えばカット割りを決める時はどんな判断が働くのか?
杉田:その都度、一応聞いてくれるので。これはもう割らなきゃっていう時には飯岡さんがちょっとって呼んで、今のこのシーンこの長さだったとして、ここまで撮るのにベストなポジションがあって、でもここからここはその位置からじゃ撮れない、写らないんだよね、どうするって聞いてくれるんで、じゃあそこで割りましょうっていうカット(笑)、ひどいと思いますけど。そこで割りますっていう、ああ分かったみたいな。
樋口:例えば2人がしゃべってるみたいな時って、基本的にカットは割らないっていう想定の元に、浮かんでくる何かを作っていくっていう感じですか?
杉田:そうですね、あくまでその時自分がカメラの横で見ている時間の流れ方に唯一OKとか出せる感覚があるので、それは後で切り返したりして割っていった時の積み重ねはイメージが出来ないんですよね(笑)。やれって言われたらやりますけど。
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