OUTSIDE IN TOKYO
LOU YE INTERVIEW

ロウ・イエ『スプリング・フィーバー』インタヴュー

2. 当局は、映画を恐れているのだと思います

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OIT:中国の観客はこれを観ることができない状況にあるのですか?
LY:そうですね、映画館では観られない。上映禁止されているので観られません。

OIT:映画館ではということは他の方法では観ることが出来るのですか?
LY:これは前の『天安門、恋人たち』(06)もそうですけど、この『スプリング・フィーバー』もとにかく海外の市場に頼って公開されているというのが現状です。

OIT:選択肢がないっていうことですよね?
LY:例えばですね、これから僕が脚本の修正を政府の要求に応じて、一つずつ直していって審査を通れば、もちろんそれは中国内で上映される許可が出るでしょう。しかし、他の監督は僕と異なった選択をすると思う。これは僕の一つの選択であって他の監督は多分一つずつ当局の要求に応じて変えていって、なんとか審査を通そうとするでしょう。そういう考え方も十分あっていいと思います。ただ僕が若干状況が異なるのは、5年間の撮影禁止ということになっているので、今自分としてはこういう状態しかないわけです。他の監督から君は自由だねって言われる、何を撮ってもいいじゃないかと言われますが、僕はそれは主体的じゃなくて受動的な自由なんだよ、と言っています。

OIT:検閲についてお尋ねしたいのですが、相手は一人の担当者なのですか?
LY:それは部門です。一人ではなくてチームになっていて、そこの部署にいる人達を相手にするわけです。

OIT:例えば審査に持っていく時の状況をちょっと説明して頂けますか?
LY:まず、今は以前と比べてずっと自由になったということがまず前提として言えます。今の状況としては1000字から2000字くらいの企画案というものを提出する。企画書を提出してそれが通れば、次は撮り終わってからまた審査委員会にあげる、そういう状況です。

OIT:物理的に送るわけですか?
LY:具体的には、自分が持っていく場合、あとはプロデューサーが持っていく場合、色々です。電影局という審査部門があって、その部門が脚本を見せなさいと要求してくるわけです。それはある見方からすると簡単な、シンプルなプロセスかもしれないんですけど、実はそうではなくて、その要求の尺度が結構変わったりするので、どの程度までが許されるかっていうのが、掴みにくいのです。だからとても複雑です。例えば時の情勢に大きく左右されますから、おそらく今の状況だと日本がらみのことを書いて企画書を出しても、多分通らないかもしれない。それは誰も分らない。通る、通らないっていうのは誰にも把握できない。それは多分、どこでもそういう審査制度があるところは同じだと思いますが、それが明確でないというところが面倒なことになっているわけです。

OIT:なぜそこがちょっと気になったと言うと、やり方ももちろんそうなんですけど、現場での検閲する側との関係性はどのようなものなのでしょう。例えば相手も分っているけれども、秘かにウィンクしたりするような、友情であるとか、そういう関係性があり得るのか、全く顔が見えない状態にあるのか?
LY:脚本の審査委員会っていうのはだいたい30〜40人くらいの、かなりの大人数で構成されていまして、その中には映画監督もいれば脚本家、それから配給会社関係の人、宗教関係、政治関係、あとは女性問題、婦女の関係ですね。そういう色々な部門の関係者が審査委員会に入っているわけです。映画界としては、審査委員会の基準が明確になってくれば、上映禁止の映画を撮ってしまうということもなくなると思うのですが、その辺が明確ではないので困るわけです。ずっとそういう案を電影局に向けて上げているわけですけど、採用されないということは、多分映画を恐れているのだと思います。映画の影響力というものを怖がっているので、そこはコントロールしているのだと思います。実際の影響力というのはそんなに大きくはないと思いますよ。小説や他の文芸作品と同じような感じだと思いますけど。




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