OUTSIDE IN TOKYO
TETSUYA MARIKO INTERVIEW

真利子哲也『NINIFUNI』インタヴュー

4. きらびやかなフロントガラスの外の世界、暗い車内には変わり果てた男がいる、
 その言葉では言えない感触を見てみたかった

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OIT:でもあのショットは素晴らしいっていうか、真利子監督の作品の中では一番ポエティックというか、ひょっとしたら初めて詩情らしきものが凄く出た作品じゃないかと思います。
真利子:今まで自分で撮った類いじゃないですね。今回、西ヶ谷さんもそうですけど、月永さんもほとんどの人が商業映画を撮ってる方で自分だけがそういうのやったことがない中で、撮影前に西ヶ谷さんには、大分話したんですけど、商業映画みたいなやり方でやってしまうと、ちょっとそれも違うけれども、自主映画みたいなやり方もまた違う、時間をかけて今回の体制的なところについて話しました。それに理解ある助監督だったので、やりやすかったですけどね。

OIT:商業映画的側面と自主映画的側面、両方が入ってますよね。お二人の両方のスタイルが入ってる。それが意識っていう部分では、明らかに真利子監督の意識が、やっぱり何かを批判している、世の中に対してちょっと言いたいことがあるというようなものを感じるんですけど、それは言葉で説明するようなものじゃないかもしれないですが。すごく元気なもてはやされる若者がいる一方で、見捨てられていく若者もいる、その断層が映画になっているっていうか、それがすごいなって思ったんですよね。そういう意識はあったんですか?
真利子:このお話に決まる前に出した企画っていうのは意識の話だったりしたんですけど、フロントガラスの外がすごいきらびやかになっている、暗い車内には変わり果てた男がいるっていうのを見るとどういう気持ちになるんだろうっていう、言葉では言えない感触があって、それを撮ってみたんです。特に批判とかっていうよりも、単純に自分がその感触を実際に見てみたかったっていうだけなんです。

OIT:それを映画にしてみたかった。
真利子:それだけの為にと言っても過言ではない。

OIT:メイキングの中で、そのショットが最初に浮かんだと仰ってましたよね?
真利子:そうなんです。それは別に現実を批判するとかっていう事でもなくて、アイドルグループ側にしても当然知らないって事だし悪気があるわけじゃない。映画でそういう状況を批判的に映しているわけでもない。ただ現実的に起こりうるその状況を提示するとどういう風に写るんだろうとか、見たらどう感じるんだろうっていう事を知りたくて。だから、出来る限り俯瞰してその状況を撮る事を心がけていたっていう感じですね。

OIT:主人公を演じたのは宮粼将さんですが、この役は宮粼さんに是非という感じだったんですか?
真利子:竹馬君と脚本の話してる時から、主人公のイメージとして、宮粼君の名前はあがっていたのですが、30代半ばの設定にしたかったので。でも最終的には、脚本上の年齢を下げて、宮粼君にお願いしました。

OIT:最初からあて書きしてたのかなっていうぐらい、ぴったりというか、はまってるというか。
真利子:そうですよね、びっくりしました。本当に頭のいい人で、普段は全然普通の会話をしてるんですけど。

OIT:そうなんですか。普段は無口じゃないんですね?
真利子:ないです。僕も心配だったんですが、明るい人で良かったです。

OIT:演出はどのようにされたんですか?
真利子:初めに脚本を読んでもらった時に分らないという感じ、分らないというのは悪い意味じゃなくて、何かこれを決定づけて進めていく役じゃないですよねっていう話はしてました。ただ実際に事件が起きた現場のロケ場所をスタッフも含めてツアーして回ってみるっていう事をやって、その時にお互い道中で、自殺についてとか、色々な話をしつつ海岸まで辿り着いて、とにかく台詞もないし、お互い掴む為にもという事で、歩き方だけを決めようって言って、一緒にこの男はどういう風に歩くんだろうという事を決めたんです。あの歩き方を決めたのはかなり自分の中でも大丈夫だと思うとこでもあったんで、きっと宮粼君も何か掴んだのかなと思ってます。

OIT:動きを決めたっていう事ですね。あと、もう一人、玉井さんが一番最初から出てくるんですよね、これは『イエローキッド』の最後で主人公をナイフで斬りつけてスクリーンから消えて行き、その次には『やくたたず』(三宅晶監督)で北の大地を駆け抜けて、この映画の冒頭に後姿でいきなり登場するわけですよね。なんか一連の繋がりを感じたんですけど、玉井さんとはどうでしたか?
真利子:本当に『イエローキッド』の時にもいい役者だなと思ったんです。いい表情する人だなと思ったんですけど、今回元々が30代半ばの設定だったんで、初めっからあそこに玉井っていう事はなかったんですけど、実際その年齢的に若くなった事で玉井君にやってもらったんです。歩き方だけで何か感じさせるものがあるなぁと思いました。

OIT:そうですね、後姿だけでね。
真利子:顔も含めてですけど、説得力あるなぁとやっぱり思いました。

OIT:顔が出てくるのは最後のあれですかね。
真利子:あ、もう本当に遠目ですけどね。


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