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KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

道本咲希『なっちゃんの家族』インタヴュー

2. 『なっちゃんの家族』は、どう見えるかっていうところを
 ちゃんと隅々まで自分で考えた結果、初めて形に出来たっていう感覚があって、
 それが今、すごく嬉しい

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『19歳』
OIT:とはいえ、そこでは具体的にはどういう点が評価されたのでしょう?
道本咲希:『19歳』の方は、作り込んだら出来ないことを、逆にやってのけたというか、私の19歳の時にしか撮れないものが撮れてるっていうことが評価されたんだなとは思っています。それが計算で出来ていたら、私はすごく才能があると思うんですけど、何となくやってみたらそうなったので、これって才能ではないんじゃないか?って思ってしまう。

OIT:『昔の恋人』にしてもそうですか?
道本咲希:『昔の恋人』は、もうちょっと後の後期作品なので、考えてはみたものの、映画や映像に対する度胸みたいなものがみんなと全然違うというか、勉強が全然足りてないまま作ったものが、評価されて、自分の足りなさがバレたらやだな、と思っていました。

OIT:そういう複雑な思いを抱きながらも、『なっちゃんの家族』の脚本を書き始めたのでしょうか?
道本咲希:バレたらやだなとは思っていたんですが、仕事をしていく内に、でも、やってみないとわからないよなっていう感覚になっていたんです。『なっちゃんの家族』は、見てくれる人がいて、どう見えるかっていうところをちゃんと隅々まで自分で考えた結果、初めて形に出来たっていう感覚があって、それが今、すごく嬉しいんです。

OIT:『なっちゃんの家族』はどのように作り始めたのですか?
道本咲希:『なっちゃんの家族』は、私の実体験を参考に制作しました。中途半端に仲が悪い家族、という関係に興味があり、暴力などの虐待とは違い、家庭内に会話がないことは当事者は辛いけれど、第三者にその辛さを訴えづらい。でもそういう家庭や辛い気持ちを持っている人はたくさんいて、そういうことを描いてみたいと思い制作を始めました。

OIT:そうすると、『19歳』にしても『昔の恋人』にしても『なっちゃんの家族』も、ご自身の人生の素材にしているという点は、今までのところ一貫しているわけですね。
道本咲希:そうですね。ただ、今回はちょっとだけでも主役を自分から離したいと思って、まだその気持ちが分かるかもしれない、自分が過去に経験をしたことのある“幼少期の女の子”という人物像を主役にすることで、自分からちょっと離れてみるということをやってみました。

OIT:ご自分の実人生をフィクションとして創作するということですよね。今回、作品を拝見して脚本が面白いと思いました。つまり、全ては脚本に書かれていて、それが映画になった作品なのだろうと思ったということです。あと、キャスティングが絶妙ですね。キャスティングは、道本さんが行ったのですか?
道本咲希:主役の少女なつみちゃんはオーディションで選びましたが、それ以外は、プロデューサー陣から推薦された方々の中から選びました。

OIT:なるほど。そうすると、白川和子さんのこととかも、存じ上げていたわけではなかったわけですね。“ロマンポルノの女王”と呼ばれたお方ですが。
道本咲希:そうなんです。お若い頃の作品を拝見して、びっくりしました。凄い方ですよね。

OIT:それで現場では、百戦錬磨の俳優さんたち、白川さんや斉藤陽一郎さん、須藤理彩さんといった方々を演出されたわけですが、いかがでしたか?
道本咲希:びびりまくってました。どう距離を詰めたら良いかわからなくて、休憩時間におそるおそる近寄っては、そっと立ち去ったりを繰り返してました(笑)でも、実際に話してみたらみなさん柔らかい方たちで、演出面では私は間違いはわかるのですが、答えがわからないことがたくさんあって、その際にめちゃくちゃ頼らせて頂きました。浅はかな言葉になりますが、みなさん凄かった。目の前で想像以上のことが起こることが多く、ご一緒できてとても楽しかったです。


『昔の恋人』
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