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KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

道本咲希『なっちゃんの家族』インタヴュー

5. 母親と仲が悪かった過去があるから、母親のことを知りたいとずっと思ってるんです。
 だから、次は母親の話をすごくやりたい。

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『なっちゃんの家族』
OIT:ところで、なぜバドミントンが出てきたのでしょうか?
道本咲希:日常的にやっていて違和感のないもので、体を動かしたいと思った時に、バドミントンがいいんじゃないかって思って、そこから夫婦同士の会話って返さないと続かないのが、バドミントンと一緒だから、仲の悪い夫婦ってバドミントン出来るの?っていう疑問からそうなったっていう感じです。

OIT:この作品は丁度30分間の短編映画なわけですが、実は、あそこで終わる必要はなくて、やろうと思えば、90分の長編映画になるような内容かなと思いました。
道本咲希:実は、最初に企画を考えた時は45分くらいが丁度いいかなと思っていたんです。だから、30分でどこまで出来るんだろう?って思いながらやってました。

OIT:じゃあ、内容的に当初のアイディアからは少し削ぎ落としたものがあると。
道本咲希:そうですね、30分だとお兄ちゃんとお姉ちゃんの話ができないんですよね。祖母の家にお兄ちゃんが来ないとこの物語は終われないだろうとも思っています。でも、30分に収めるために泣く泣く削ぎ落としました。

OIT:多くの映画では、子どもが両親に離婚してください、とはあまり言わないと思いますが、この映画ではそれをやっていて新鮮に感じました。この発想はどのように出てきたのでしょうか?
道本咲希:どのように出てきたのでしょうか・・・なつみのことを考えてたら出てきた気がします。

OIT:これは、フランスのような個人主義が確立している社会ですと話が変わって、離婚とかバンバンしているわけですが、日本社会では、子どもの考えはともかく、親は両親が揃っているのが良いという暗黙の了解というか、コードのようなものが、相変わらず家父長制が強く残るこの社会にはあると思います。道徳のようなものの一部として。その中で逆を行くようなセリフですから、新鮮に映ったのかもしれません。脚本指導として、脚本家の小川智子さんと監督の深川栄洋さんの名前がクレジットされていますね。
道本咲希:私は、深川さんから、4週間、週に1回のペースで4回指導を受けました。その指導を受けて変えた部分もあります。深川さんからは、最後に物語をきちんと終わらせられる監督になった方がいいよということを言われて、私的に結構ちゃんと終わらせたというつもりで書いてはいます。でも、終わってないかもですね(笑)

OIT:僕が見た限りでは、まだ続きがあっても良いかなとは思いました。
道本咲希:そっか、そうですね、確かに。

OIT:その深川監督の指導で変わったのは、どういうところなのでしょうか?
道本咲希:私、実は脚本を書くのが苦手過ぎて、出来ない分、無茶苦茶時間をかけたんですよ。はじめはもうちょっと感動風で、なつみが泣いちゃうみたいなことを脚本に書いてたんですけど、深川さんが、泣かないでも多分いけるよ、ということを言ってくれて、その後、考え直して、今の形になってるんです。

OIT:それは良い指導でしたね、泣かなくて良かったですね。
道本咲希:ほんと、泣かなくて良かったです。

OIT:これからはどういう活動をしていきたいと考えていますか?
道本咲希:映画を続けていきたいと思っていて、もう私の身近な話ではなくて、これからは私から遠い人の話をやりたいです。例えば、異性の話だったり、年齢が遠い方の話であったり。私が経験していないことを経験している人の話を撮りたいと思っています。一つあるのは、母親と仲が悪かった過去があるから、母親のことを知りたいとずっと思ってるんです。だから、次は母親の話をすごくやりたくて、母親目線の寂しさとか子供に対する思いとか、そういうものを描きたいと思っています。それと、あとは、今回の作品のようにちょっと笑えるみたいなことはすごくいいなと思っていて、ちょっと笑えるけど、問題は問題として考えることが出来るような、面白いものを作りたいと思っています。

OIT:映像へのこだわりというのはありますか?
道本咲希:私自身、今までは物語と役者さんのお芝居を撮るということに注力しているところがあって、そこに出演している人たちの距離感が適正であれば、見た目の部分は今までは結構お任せをしてしまっていたのですが、今後はちょっと変えていきたいなとは思っています。また見えない空間さえもつくれてしまう音の作りはとても気にしていて、今回も環境音のバランスとか、音楽のバランスは結構こだわってやりました。そうした細かいディテイルは大切にしていきたいなと思っています。

OIT:今までご覧になってきた映画で、この監督の作品が結構自分の頭の中にあるんだよな、っていうのはありますか?
道本咲希:よく見ていたのは是枝監督の作品なんですけど、『誰も知らない』(2004)は何度も何度も見ている映画です。あとは、ダルデンヌ兄弟の映画みたいなものをやりたいって思ってました。

OIT:ダルデンヌ兄弟は素晴らしいですよね。道本さんの、これからのご活躍を楽しみにしています。
道本咲希:ありがとうございます。



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