OUTSIDE IN TOKYO
MIYAKE SHO INTERVIEW

三宅唱『Playback』インタヴュー

5. 村上淳さんには、バスター・キートンです、と

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OIT:役者さんの話を伺いたいんですけど、最初に村上淳さんから。キャリアが長い方で、最近では、山本政志監督の『スリー☆ポイント』(11)が良かったですけど、敢えて言っちゃうと、『Playback』が一番良かったんじゃないかなと思ってるんです。実際、どうでしたか?
三宅唱:リアクションの人として村上淳さんを演出したい、そういうキャラクターとして活かしたい、ということを事前に考えていました。事態が分からないままぼんやり歩いていると後から周りの世界がついてくる、そんな存在にしたいと思った。だから村上淳さんには、バスター・キートンです、と。

OIT:40歳の役者である村上淳さんは、病気じゃないかと疑って病院へ行ったり、記憶喪失かもしれないと思ったり、精神的に参っているようにも見えます。こうした肉付けは、繰り返し同じことをやることを仕事としている役者って何だろうって考えた時に出来てきたものですか?
三宅唱:そうですね、繰り返しってやっぱり疲れますよね。いつ終わるんだろう、っていう不安もあるし。それをこの映画の重要なエモーションにしたかったし、疲労や不安は、僕たちの生活感覚にもべったり張り付いてる。俳優は特別で特殊な存在ですが、僕らと同時代に生きているわけで、どうやってリンクさせるかが最初から勝負どころでした。

OIT:渋川さんと河井青葉さんは濱口竜介監督の『PASSION』(04)が印象に残っていて、彼女の独特の喋り方が凄く良いわけですが、それが本作でも効いていますね。キャスティングする時に『PASSION』は頭の中にあったんですか?
三宅唱:渋川さんはもともとファンでした。一度『やくたたず』でもご一緒できるチャンスがあったのにもかかわらず僕が無礼にも断ったことがあるんですが、今回一緒にできて、ほんとにうれしかったですね。河井青葉さんは『PASSION』の印象と、『PASSION』以降に出てらっしゃる作品で気になっていました。

OIT:河井青葉さんは何が気になってたんですか?
三宅唱:河井さんの話す声には、なんだかアクション感がありますよね。今回は、自分の過去のことや噂話などを話す、それが物語だという映画でもあるので、河井さんが相応しかったと思います。

OIT:三浦さんは、最近だと井土紀州監督の『彼女について知ることのすべて』(12)の主役が印象的だったんですけど、三浦さんはどういう風に決まったんですか?
三宅唱:『きょうのできごと』で気になって以来、いい人がいるな、と思ってたんですが、小沼雄一監督の『結び目』(10)を観て、今まで以上に興味が湧きました。

OIT:クローズアップで一番印象に残ってるのは三浦さんの顔で、なんか昔の日本映画みたいなね、感じに見えるんですよ。そこからの連想もあるんですけど、記念撮影のシーンがあって、小津の映画で記念撮影すると必ず人が死ぬっていうのがありますよね、で、今回も特殊な存在として出てくるわけです、その時に小津の映画が頭の中にあったりしたんですか?
三宅唱:後から気づきました(笑)。いや、もちろんわかってましたけど、でもそんなに強く意識はしなかったんじゃないかな……。三浦さんが不在の人物になる、あるいは元々そうである、というような微妙な部分を映画のなかでどう明かすのか、どういう表現をしようかというのは、いくつかパターンを考えていたんです。結果あの形に落ち着いて、それがたまたま小津的なものだったんだな、と言えばそうなりますね。

OIT:まあ、その一言で済ませられちゃ困るけどっていうことでしょうけど(笑)。でもあの結婚式場のホテルは、なんか小津監督縁の地である鎌倉的な風情があったように思うのですが。あそこのロケは良かったですよね。
三宅唱:そうですね、あのように大きなガラスが一面にある場所が使えたのは大きかったですね。いいガラス窓があるとつい撮りたくなってしまいます。


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