OUTSIDE IN TOKYO
REHA ERDEM INTERVIEW

TIFF2010 レハ・エルデム監督インタヴュー

3. 動物の獰猛さに私は影響を受けています

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OIT:その自然物、ある意味崇高な存在への意識は『コスモス』に関してはとても強く感じるんですが、監督の考えを聞かせて下さい。
RE:それは『コスモス』において、確かによりはっきりと見えてくるものです。今、世界で動物達の置かれている現状というものを見れば、よくその事の意味が分ってくるんじゃないかと思います。我々は時々、人に驚愕するわけです。一般的な意味で言っているのですが、いかに荒々しく獰猛なものかと。私達の中にもそういった獰猛なものがあって、でもそれは人間ですからいろんなふりをしたり、だましたり、芝居をすることによって隠すことはできる。でも動物はそれできませんよね。動物はいかに荒々しく獰猛であるかということを実感させられ、それに確かに私は影響を受けているということは言えます。そこから我々が持っている悲劇というものが見えてくるわけですね。

OIT:我々というのは、人間のことですか?
RE:そういうことです。動物を通して見えるということ。

OIT:主人公のコスモスは“理想の男”と仰っていたわけですけど、監督はできるならこういう風になりたいということですか?
RE:私は彼ほど勇気はありませんが、彼は非常に勇気があって、そして非常に寛大な人ですね。でも彼に憧れることによって一歩は踏み出せたかもしれない、願わくば第二歩も踏み出したいところですね。

OIT:この作品を作りたいという欲求の中には、こういう生き方、こういう存在を、例えば観客に訴えたいという意識に基づいていると考えていいのですか?
RE:誰かに何かを提案するというつもりではないです。そもそも誰にも提案することなんて出来ない。ただそういった存在が理想的なものだということを見せることは出来る。それはとっても汚れなきピュアなものですね。彼は田舎町の喫茶店にいて、全く恐れない、恐れずに自分は恋が欲しいと言うんですね。そんなことを田舎町の喫茶店で言ったら殴られて叱られてしまいます。でもそういうこともあり得るんだと人々に想起してほしかった、あり得る!と。可能なのだと、あり得るんだと。そういった存在になれるはずはないんですけど、あり得る!ということですね。彼は規律もない、あらゆることにも関わらず、でも存在している。それによって危害が及ぶこともない。それが今私達が抱えている色々な悲劇を緩和させることになるのではないでしょうか?

OIT:そもそも監督が映画を作る意味というのはそこにあったりしますか?
RE:どう言っていいのか、まあそういうことなのでしょう。今後、『コスモス』の役割がまた私の映画に入ってくることはないとは思いますが、この映画を作ることによって、まず私は自分自身に道を示そうと思ったのでしょう。


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