OUTSIDE IN TOKYO
SHIBATA GO INTERVIEW

柴田剛『堀川中立売』インタヴュー

3. 臨機応変に対応した現場、独特の存在感を放つ清水佐絵

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OIT:しっかりと脚本もコンテも書かれたっていうことですが現場でアドリブは結構あったんですか?
SG:それはもう、この現場でやるならやってくれっていう、そんな感じだったんですよ。アドリブがピシっとはまるようだったら、僕も嬉しいんです。ドキドキはしてるんですけど、そことのせめぎ合いだったり。

OIT:テイクは何回も撮ったりしたのですか?
SG:撮りましたけど、全体的にはだいたい3テイクまでとか、そんな風にトットコトットコ行こうっていう感じで。

OIT:カット数が多いですもんね。
SG:もう異常に多かったんで、トットコやろうっていうのと、色々工夫したんですね。全部至近距離で撮影をするとか、制作進行表で進み具合と内容をこなしていくっていう。むしろ例えば、今こう会話してるこの場所でなんかもう撮らざるをえないとか撮れとか言われたらカメラ置いて撮っちゃうっていう、いつでもその心構えはあった。その分もっと僕もまだ見ていないビジョンを補填してくれることを役者達に期待をしていた。だからそれがピッとはまった時のアドリブは本当に嬉しかったです。

OIT:アクションも結構多かったですけど、アクションは決めてやらないとカメラのポジションとかもあると思うんですけど。
SG:アクションは全然決めてないです。HDで撮ってるんですけど、その機動力は活かさせてもらったっていう感じですかね。“技斗”という撮影現場でアクションの振り付けをしてくれる役割があるんですが、それをやってくれる人がなかなか見つからなくて。でも台本には“バトル”って書いてあって、主演の石井モタコはカンフー映画好きってこともあって、スタッフが“このシーンどうするんだ?”、となっていた状態でした。だけど半分期待もあって、やればできるもんだろうって雰囲気もあるし、どうしようかなっていう。で、直前で太秦から技斗さんが仕事の合間に来てくれたんです。そしたらもうそれをそのままやってくしかないですよね。後は他の技術部はもうえらいことですよ。えらいことですけども、騒いでしまうと映画が壊れてしまうんで、フレキシブルに対応してもらって。

OIT:対応するしかない。
SG:そうです。アクションの中にスパイスとして笑いっていうのは入れましたけど。おおよそカンフーじゃないことをしてる役者がいたりとか、場のムードメーカーになってもらって、本当にあってはならないような準備のない現場を、準備のないアクションシーンを上手く切り抜けたと思います。

OIT:アクションシーンではないんですけど、石井モタコが演じるヒモの彼女、清水佐絵さん、とても良かったですよね。ほとんど日常の動きがアクションみたいな。
SG:ひろいましたね、やっぱり。あのカラーリングのホットパンツとか、僕が映画に出てくれって言ったら彼女の方が妹と一緒にコーディネイトして大量に写真送ってきたんです。彼女にこの役やってもらうっていうのも必然っていうか、もうものすごいあて書きだったんですよ。動きが特徴的なんですよね。

OIT:画面からはみ出てたりとかするんですけど、すごい勢いがあるっていうか。
SG:どうしても見ちゃうんです。

OIT:僕も初めて映画で拝見して、この人おもしろい女優さんっていうか、その時はミュージシャンだって知らなかったので、あとで見てYouTubeで見て、結構かっこいいバンドだなと。もともとバンドの時からご存知だったんですか?
SG:彼女はHATENA TAXIっていうバンドをやってます。僕は10年前から知り合いなんです。彼女も映画作家でして2000年のPFFで審査委員長の新藤兼人審査員特別賞を清水佐絵にあげたんです。理由が「もっとおしりが見たかったからです」って言って(笑)。

OIT:新藤兼人さんの作品は結構エロい映画が多いですよね。
SG:エロい映画多いです。

OIT:だから長生きされてるのかなぁと思ってるんですけど。
SG:壇上でうつむきながらポッて頬を赤らめて。稲中みたいな感じ(笑)。僕はその時、映写技師だったんです。清水佐絵が審査員特別賞もらった『MY beautiful EGO』っていう映画が、オープニングからあいつのケツが出てくるんです。捨て身なんですよ。妹と実家の山梨で遊びながら撮影したのを断片的に繋げてる。あとものすごかったのが、著作権のこととか無視だったので、もうニルヴァーナとかザ・ローリング・ストーンズとかセックスピストルズとか大量に使いまくって。

OIT:ある意味ゴダール的というか。
SG:そうですね、何でも持ってきちゃう。今、YouTubeで見れると思うんですけど、それは音楽は差し替えてる。もともとそういう人だったんですね。僕が上映会する時には作品を借りて上映したりしています。映画を結構やってたんですけどやめて、今はバンドを組んでいます。

OIT:映画をやってほしいですね。一緒にやるとか、簡単にはいかないですよね?
SG:実はつい最近、愛知芸術文化センターというところからオファーがあって映像作品を制作していたんですけど、準備段階で佐絵が僕の助監督になるっていう話があったのに、あいつの仕事の都合でちょっと無理になっちゃったんですよね。ほっとしてるんですけど。その現場で僕は多分跡形も無くなくなってしまいそうな気がして。抜け殻すらもないみたいな(笑)。

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