OUTSIDE IN TOKYO
TERRY GILLIAM & LILY COLE INTERVIEW

テリー・ギリアム&リリー・コール『Dr.パルナサスの鏡』インタヴュー

1. 日本よ、裏切られないでくれ!

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Q: それでは、まず、『Dr.パルナサスの鏡』を完成させるに至った、何ヶ月、何年にも及ぶ大変な体験を経て、今となってはもう自分の中で落ち着いていますか?
テリー・ギリアム(以降TG): あともう一日、この映画について話したら全てが終わる。今日と明日、それで全ては過去になる。
リリー・コール(以降LC): そうね(笑)。
TG: そうしたらもう二度とこの映画について話さなくていい(笑)。
LC: でも、自分の中では落ち着いたの?
TG: それはもう、十分に落ち着いたよ。だって今は、いや、もうずいぶん前に落ち着いた。ようやく映画が完成し、最終編集し、人に見せ始めて、映画自体がうまく機能していることが分かった時点で、僕の中では終わったんだ。もうそれで十分さ(笑)。じゃ、リリーはどう?
LC: そうね、まだ過去のものって感覚にはなれないのよ。
TG: そうなの?
LC: (笑) まだ自分の中のどこかにある気がするの。
TG: でもひとつ言えるのは、日本で公開されるのが世界でほぼ最後だから、日本で大ヒットしない限りはまだ落ち着いてはいられないのかな。
LC: そうね。わかった、日本でヒットするまではね(笑)。
TG: 日本よ、裏切られないでくれ、ほんとに(笑)。


Q: (さて)とても刺激的な時間を過ごさせましたが、まず視覚的に、何度も登場するゴンドラが印象的でした。このゴンドラに特別な意味はあるのでしょうか。例えば、生と死、夢と現実、またその架け橋とか。それとお気に入りのアイテム、造形物はありますか?特にお気に入りのものがあれば教えてください。あとリリーも、完成した作品を見て、造形物やCGの映像で好きなアイテムがあれば教えてください。
TG: ゴンドラで言えば、ピラミッドに合うものが必要だったんだ(笑)。ピラミッドと言えばエジプトでしょ?死者が入れられたものだよね。でも同時に、カミソリの刃も研いでくれるんだ。あれ、リリーはニューエイジの信奉者じゃなかった(笑)?
LC: 何をするですって?
TG: だから、70年代、または60年代にも、小さなピラミッドにカミソリの刃を入れとくと、不思議と刃が研がれてると言われたことがあってね。それでカミソリの再生も意味してるんだ。まあ、それで、エジプトとカミソリの再生のモチーフさ。あと、その場所へ連れていくための川がいる。そしてゴンドラは、(頭が犬の)アヌビス神が舳先に付いた舟だ。そこでゴンドラはエジプトの舟になり、アヌビスは死の世界へ誘う神になる。つまり、生と死と変成が混濁したものだ。まあ、そんなところさ(笑)。でも観客はそれをどう理解してもいいんだよ。
LC: それに宗教まで作ってたわね。お守りみたいな。
TG: そう、そういうのもある。でもそれは観客のためのヒントに過ぎない。それに反応した人は、いろんなところを覗いて廻って、エジプトやアヌビス神や川について学べるかもしれない。
LC: カミソリの刃もでしょ!
TG: そう、カミソリの刃も。十分に掘り下げられたらね(笑)。だからそこは始まりに過ぎない。これで答えになってるか分からないけど。そして(移動)舞台だけど、僕はあの舞台が大好きだ。飛び出す絵本のように開く奇妙な馬車のようだ。19世紀のおもちゃの劇場みたいにね。しかも、実物大だ。僕が具現化したかったものさ(笑)。
LC: そうね。私もそれを挙げようと思ってた。一番分かりやすいチョイスだけど、本当にすごいアイデアだと思うの。構造体としても圧倒的だし。だって現実に、映画の中で見られるように、背後に作り物のセットがあるわけじゃないんだもの。実際に駆動する本物の馬車で、開いちゃうし、私のための本物の寝室だってあったんだから。
TG: 君は中で寝てないけどね。
LC: そうなの。寝てないの(笑)。でも一度だけ…。足先がはみ出したわ。
TG: え、寝たの?
LC: 冗談よ(笑)!
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