OUTSIDE IN TOKYO
WOODY ALLEN & EWAN MCGREGOR INTERVIEW

ウディ・アレン&ユアン・マクレガー
『ウディ・アレンの夢と犯罪』オフィシャル・インタヴュー

ウディ・アレン監督 インタヴュー

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成功や名声について

キャリアの最高期にある人間からしばしば発せられるのが「成功それ自体には何の意味もない」という言葉だ。傑作を連発しているペドロ・アルモドバル監督も、その最高期に同じような発言をしている。現代の若者が“成功回避”をしていると様々なシーンで指摘されているが、さまざまな分野における成功者のこうした発言が、その傾向を作り出すことに一役買っているのかもしれない。だから、“成功”すること自体よりも、“愛し/愛される”ことをより求めるのは、必要十分条件を満たした場合の人類の、進化的側面と考えても良い時代になったのだろう。


──成功や名声についてはどうお考えですか?
ウディ・アレン:若い時には、いつかマーロン・ブランドやキャサリン・ヘップバーンといった名前を持った隣人のいるプール付きの家をカリフォルニアに持ちたいと夢見るでしょう。それからそれが実現し、すっかり失望するのです。それは人生を深い所で変えるものではないのです。体の調子がいいこと、愛すること、愛されることの何の手助けにもならないのです。私は自分をチャンスに恵まれた人間だと考えていますが、成功は健康にとっても恋愛生活においても何の助けにもなりません。もちろん失敗もですが。つまり、生涯の一進一退には人生の最初に想像したほどの甚大さがないのです。
──もし世界が不条理であるのなら、なぜあなたはこの映画の中でしたように道徳を気にかけるのでしょうか?
ウディ・アレン:人生には意味がないということが、人生に道徳がないことではありません。逆に道徳的に良い選択を取るようにお互いに助け合わなくてはなりません。もちろん口で言う事は簡単ですが、実行することは難しいです。しかし挑戦することがとても大切なのです。人生が憂鬱であればあるほど、私たちはお互いを必要とするものなのです。

映画について

──あなたは絶望的な考えから逃れる方法として映画を作っている、とよく語っています。映画は、あなたを救う代わりに活力を与えているものに思えます。
ウディ・アレン:映画作りは非常に良い気分転換、そして気晴らしなのです。私はしばらくの間、もしある仕事が必要ならば、映画を作ることが人生を過ごす快適な方法だと考えていました。それに私は辞めたくなかった。現実から逃避するために、長い年月の間映画に没頭したかった。でも今は私も少し変わりました。映画を監督することは私の最も優先することではありません。私には映画を作ることができるから、それをしている、その方法を知っているからです。しかし今の私は、夜家に帰ることを嬉しく思います。私は完璧主義ではありません。私は多くのテイクをとらずに早く仕事をします。一つの細部も失敗したくない、大写しやリバースショットを撮る監督がいますが、私はそうではないのです。私は作品を進め、そして終わらせたいのです。どうも私には、情熱や強迫観念が欠けているようです。
──それでも毎年新作映画を、そして定期的に小説も発表していますね…
ウディ・アレン:私はまだ怠惰な人とまではなっていません。同じシーンを10回も撮影する監督たちもいますが…私は彼らが2日かけてすることを2時間で仕上げてしまいます。私は完璧主義者ではありません。私の栄華の唯一の障害は私なんです! 私の家族との生活、クラリネット、そして野球が、傑作を作るよりも重要なことなんです。家でパジャマのままでいる小説家であることが私の幸福にとっては十分です。映画を撮り続けているのは、そのために私にお金を出してくれるからです! しかしこれはもうあまり長くは続かないかもしれません。プロデューサーたちは誰にも分からないように作品を作り、決して<マネー・メーカー>にはならない奴に何百万ドルも出すことをためらっているからです。
──でも相変わらず全てのスターたちがあなたと撮影することを夢見ていますね。
ウディ・アレン:彼らは他にすべきもっと良い事がなければ、私に「イエス」と言います。私は彼らに労働組合の決めた最低賃金しか払いませんが、撮影には彼らの時間をあまり取らず、彼らにその名に値する役を与えています。『マッチ・ポイント』の成功のおかげで、スカーレット・ヨハンソンはハリウッドのスタジオに3倍のギャラを要求できるようになりました。私は彼女に歩合を要求しようと思わなければなりませんよね!
──映画のない人生を想像できますか?
ウディ・アレン:問題なくできますよ。私は自分がやりたかったことをやりたかったように撮影してきました。ハリウッドが私に色目を使ってきた時、拒否しなければいけないと知りました。もし私の作品が十分なお金を稼ぐことができなければ、もうお金を与えてくれず、私のキャリアは終わっていたはずです。取るに足りない1500万ドルで何本もの長編映画作りをすることによって、私はボックス・オフィスの奴隷にはならないのです。私は私のやり方で撮り続けています。重要な2つのことは脚本と俳優です。それ以外は後回しなのです。

「ハリウッドで成功する秘訣は、常に前作のバジェットを上回る作品を作り続けることです」と言ったニコラス・レイに、ブニュエルが「それは破滅への道だ」と応えたというエピソードがあるが、アレンは正にその破滅への道を巧妙に避けて、自らの道を切り開いて来た映画作家の代表例のような存在だ。毎年コンスタントに素晴らしい作品を届けてくれる稀有な映画作家ウディ・アレン、来年も再来年も、そして再々来年も、気分が乗らなくて多少手を抜いた場面があったとしても、私たちは、彼の新作をいつでも楽しみに待ち望んでいる!
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