OUTSIDE IN TOKYO
TARO OKAMOTO INTERVIEW

イタリア映画祭の10年を振り返って
〜作品選定委員岡本太郎さんの21世紀ゼロ年代的イタリア映画ガイド〜

4. イタリアでは口コミが映画宣伝に機能している

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OUTSIDE IN TOKYO:アメリカですとIMDBとかRotten Tomatoesとか、映画のレビューや格付けがネットですごく盛んですが、イタリアはどうなのでしょう?
岡本太郎:イタリアも結構あるみたいですけど、結構口コミが多いですね。誰が見て、おもしろかったって言ってるとか、それはすごくある。だから日本ほど宣伝にお金をかけてないと思います。だからジョルジョ・ディリッティの最初の作品はミラノで1年半くらい単館でロングラン上映された。そもそもプリントが2本くらいしかなかったんですよね、自主製作なので。1年半上映されたのは、やっぱり口コミなんですよね。一昨年映画祭でやって、去年公開されたアンドレア・モライヨーリの『湖のほとりで』も口コミでどんどん広がって宣伝はほとんどやってないですから。最初は少ないプリントで始めて、口コミが機能して、だんだん広がっていた。

アンドレア・モライヨーリ『湖のほとりで』(07)
OUTSIDE IN TOKYO:じゃあ日本みたいに最初にバンと宣伝して、一気に初日の入りで全てが決まるみたいな感じではない?
岡本太郎:基本はやっぱり初日とか一週間とかで決まるわけですが、配給の仕方もいろいろあるわけですよね。配給会社によっては、この映画についてはこういう風にやっていこうっていう。でもそれでも全然あっという間に終わっちゃうんで、誰も観られなかった映画とかありますよね。去年やったサルヴァトーレ・メレウの『ソネタウラ-“樹の音”の物語』なんてそうだったみたいです、僕はすごく好きだったんですけど。ほんとに『ソネタウラ〜』に関しては去年も今年も映画関係者とか色んな人に聞いたんですけど、観ていたのはジョルジョ・ディリッティだけでした。彼も絶賛してましたけど、みんなそれいい映画だって聞いてるんだけどって。タイミングってありますよね。

サルヴァトーレ・メレウ『ソネタウラ-“樹の音”の物語』(08)
OUTSIDE IN TOKYO:難解なんですか?
岡本太郎:サルデーニャって田舎だからイタリアってイメージじゃないし、難しいというよりは地味と言えなくもない、でも映画としては素晴らしい作品です。個人的には今まででもっとも気に入っている作品の一つです。
OUTSIDE IN TOKYO:ところで、女優さんとか俳優さんでこれはっていう人は?
岡本太郎:去年のイザベッラ・ラゴネーゼ、『見わたすかぎり人生』に出ていた女優は今すごくいいです。それから『やがて来る者』のアルバ・ロルヴァケルもすごいいいですね。ボローニャの近くの山の中の話です。ナチの大量虐殺の話です。
あとマルゲリータ・ブイという女優さんが本当に脂が乗り切ってて、高齢出産で母親になる主人公を演じてるんですけど、彼女自身も高齢出産を経験しているんです。この映画で再々々評価された女優ですけど、確か2000年くらいに子供を産んでいて、監督にも何人か子供がいて母親と仕事を両立させていて、そういうのもあるんだろうと思うんですけど、すごく描き方が綺麗なんです。リアルな綺麗さ、作られたものじゃなくて。そういうのはやっぱりこの監督の力、ドキュメンタリーも撮っていて、すごく現実的、でもちょっとファンタジックなところもある。

パオロ・ヴィルツィ『見わたすかぎり人生』(08)

イタリア映画祭2010


■イタリア映画祭で上映された注目監督の作品

アンドレア・モライヨーリ監督
『湖のほとりで』(07)

サルヴァトーレ・メレウ監督
『スリー・ステップ・ダンス』(03)
『ソネタウラ“樹の音”の物語』(08)
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