OUTSIDE IN TOKYO
TARO OKAMOTO INTERVIEW

イタリア映画祭の10年を振り返って
〜作品選定委員岡本太郎さんの21世紀ゼロ年代的イタリア映画ガイド〜

5. 今年のセレクションの中の注目作品について

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OUTSIDE IN TOKYO:今年のセレクションの中でベロッキオの2つが別格ですごいということの他に、これは押したいというものは?
岡本太郎:フランチェスカ・コメンチーニの『まっさらな光のもとで』が、すごくいいですね。これは映像も美しくて、内容もあるし、観ていて暖かい気持ちになれる映画。
フランチェスカ・コメンチーニ『まっさらな光のもとで』(09)

OUTSIDE IN TOKYO:ルイジ・コメンチーニの娘さんですよね?
岡本太郎:二人いますね。もう一人はクリスティーナですけど、フランチェスカの方がいいです。あとこの『やがて来たる者』っていうのも、ちょっと不思議な映画ですけどおもしろい。それからアレッサンドロ・アンジェリーニの『頭を上げて』は、ちょっと問題作なんですけど。観た人がどう思うか、むしろ知りたい。展開が唐突で、前半と後半で全然違う映画になってる。僕はこの監督はすごく好きで、絶対にいい作品を撮り続けてくれるって思うんですけど。

アレッサンドロ・アンジェリーニ『頭を上げて』(09)
あとおもしろいのはスザンナ・ニッキャレッリの『コズモナウタ-宇宙飛行士』とか。
OUTSIDE IN TOKYO:これは何かこの画が既におもしろそうなんですけど。
岡本太郎:とぼけた感じで。60年代の話です。
OUTSIDE IN TOKYO:月に行った時代。

スザンナ・ニッキャレッリ『コズモナウタ−宇宙飛行士』(09)
岡本太郎:そうですね。ソ連が宇宙開発でアメリカをリードしていた60年代にイタリアでその10代の女の子がどうしてたかっていう、まあちょっと青春物語風、青春っていうよりもうちょっと若いですけど。あとダヴィデ・フェラーリオの『それもこれもユダのせい』はおもしろいです、これは独特のフェラーリオのセンスですね。役者の使い方がおもしろいですね。素人役者を、ほんとに上手く使います。刑務所で囚人を使って撮っています。
OUTSIDE IN TOKYO:本物の?
岡本太郎:本物の。おもしろいですよ、これ。
ダヴィデ・フェラーリオ『それもこれもユダのせい』(08)

OUTSIDE IN TOKYO:『トリノ、24時からの恋人たち』の監督ですよね?
岡本太郎:そうです。だからあのすごいポップ感覚で。やっぱりあれも映画博物館という建物のロケーションが大きな意味を持っていましたが、これは刑務所ですね。刑務所が劇場みたいになっている。だけど別に舞台みたいになっているわけじゃないです、演劇ではないです。映画の感覚で撮っている。そこがおもしろい。
OUTSIDE IN TOKYO:主役はプロの俳優ですか?
岡本太郎:主役と何人かはプロの役者さんで、その辺はフェラーリオらしいなと思います。すごくポップなセンスだし。主演女優さんに超のつく魅力があることも間違いないですね。イタリア人ならそれだけで観に行くんじゃないかというくらい。

イタリア映画祭2010


■イタリア映画祭で上映された注目監督の作品

フランチェスカ・コメンチーニ監督
『ママは負けない』(04)
『私たちの家で』(06)
『まっさらな光のもとで』(09)

アレッサンドロ・アンジェリーニ監督
『潮風に吹かれて』(06)
『頭を上げて』(09)

スザンナ・ニッキャレッリ監督
『コズモナウタ—宇宙飛行士』(09)

ダヴィデ・フェラーリオ監督
『真夜中を過ぎて』(04)
『プリモ・レーヴィの道』(06)
『それもこれもユダのせい』(08)
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