OUTSIDE IN TOKYO
Bruno Dumont Interview

ブリュノ・デュモン『ジャネット』『ジャンヌ』インタヴュー

2. 私の作品では、どの作品を撮る時もロケ地でオーディションをしています

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『ジャネット』ジャンヌ・ヴォワザン
OIT:分かりました、ありがとうございます。ここからは、今回日本で『ジャネット』と『ジャンヌ』が公開されますので、『ジャネット』と『ジャンヌ』に関してお尋ねしたいと思います。二部作で公開された訳ですが、最初からそういう構想で作られたのかということと、このプロジェクトがどのように始まったのかということを教えていただけますか?
ブリュノ・デュモン:元々二部作にするつもりは全くなかったんです。最初に『ジャネット』を撮った時は、どちらかというとジャンヌ・ダルクというよりも(シャルル・)ペギーに関する私の関心と、ペギーを題材として扱うことの喜びが先んじていました。そして、『ジャネット』を撮ったことによってますます続編も作りたいと思うようになったわけです。どうしてこのテーマに興味を持ったのかというと、多くの映画作家がジャンヌ・ダルクを扱っていますが、欧米の絵画にはとても重要な主題というものを繰り返し扱うという伝統がありますね、例えば、イエス・キリストの“受難”であるとか、そういったものを繰り返し扱うということがあります。だから私も、少し陳腐ではあるかもしれない、語り尽くされた、使い古されたようなテーマというものに私なりにアプローチしてみたいという気持ちが湧いたわけです。
ただ私が何かそこで違うことをやろうとしたのは、今までジャンヌ・ダルクを演じてきた女優というのは実際40歳に近い年齢の女優から一番若くても18歳ぐらいだったけれども、私はもっと若い10歳位から18歳位までの本当の意味でのジャンヌ・ダルクというものを描きたいと思ったのです。『ジャネット』の場合、まだ8歳だったリーズ(・ルプラ・プリュドム)が演じていますが、実際のジャンヌ・ダルクは本当にこれぐらい小さかったわけですから、『ジャネット』の場合はかなり真実に迫っていると思っています。『ジャンヌ』の方は、少し奔放な想像上のもの、ファンタジーを加味しています。『ジャネット』で思春期になったジャネットを演じている女の子(ジャンヌ・ヴォワザン)がいましたよね、当然皆さんは、『ジャンヌ』では、その子がジャンヌ・ダルクを演じると思われたかもしれませんが、ちょっとした偶然から、彼女は一緒に撮れないということになったので、じゃあ『ジャネット』の幼少期を演じたリーズにお願いしようということになったわけです。

OIT:『ジャネット』の幼少期と『ジャンヌ』でジャンヌ・ダルクを演じたリーズさんは、地元のオーディションで発見されたと伺っています。
ブリュノ・デュモン:そうです。いつもそうなんです、私の作品では、どの作品を撮る時もロケ地でオーディションをしていますが、今回も小さい女の子を探してロケ地でオーディションをしました。演技と歌のテストしたのですが、カメラテストをしてみると、リーズは、すごくシネジェニックで画面写りがいい、そして彼女の歌い方、歌いっぷりもとても気に入りました。

OIT:『ジャネット』はミュージカル映画ということで、振り付けがあり、台詞もたくさんあります、リハーサルはかなり念入りにやられたのですか?
ブリュノ・デュモン:もちろんです、今回の作品は、シャルル・ペギーの戯曲を映画化してる訳ですから。シャルル・ペギーの言葉を元にした台詞は全くもってアドリブ不可能という状況だったわけです。でもリーズは、暗記するということに関しては学校で小学生として慣れていましたし、映画は少しずつ撮っていきますから、全ての長台詞を一度に覚える必要はなくて、少しずつ部分部分を暗記してもらうという形で撮っていきました。しかも耳にはイヤホンをつけています。このイヤホンは元々、音楽を聴きながらアカペラで歌えるようにつけていたものですが、音楽を聴いて歌うための役割と、台詞をちょっと忘れてしまった時に緊急で台詞を吹き込みたいという時に役立ちました。


『ジャネット』ジャンヌ・ヴォワザン
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