OUTSIDE IN TOKYO
Bruno Dumont Interview

ブリュノ・デュモン『ジャネット』『ジャンヌ』インタヴュー

3. まだ歌にも踊りにも目覚めていない、目覚めるちょうど前夜のような、
 そういう不完全さが私にとっては素晴らしいと思えた

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『ジャネット』リーズ・ルプラ・プリュドム
OIT:『ジャネット』がフランスで公開された時には、“未確認飛行物体”という批評も出ていたようですが、素晴らしい振り付けをしたフィリップ・ドゥクフレとの共同作業はどのようなものだったのか教えていただけますか?
ブリュノ・デュモン:フィリップ・ドゥクフレはフランスでは本当に有名なコレオグラファーです。ただ問題は、リーズが全然踊れない子で、ドゥクフレもちょっと困惑していたぐらいなんですが、私はそれがいいと思ったのです、しかも歌もあまり上手くはない。でも私は、踊りも上手くない、歌もそれほどでもない、それがまさに子供時代のジャネットにピッタリだと思ったのです。未完成な状態、まだ歌にも踊りにも目覚めていない、目覚めるちょうど前夜のような、そういう不完全さが私にとっては素晴らしいと思えたのですが、ドゥクフレは教えても教えてもなかなか正確に踊ってくれないので結構不満を抱えていたみたいです(笑)。

OIT:なるほど(笑)。音楽も非常に素晴らしかったのですが、『ジャネット』でのIgorrrさんとの共同作業はどのように進められたのですか?
ブリュノ・デュモン:それも振り付けと同じ理由なのですが、ペギーの台詞がすごく難しいということが根本にあります、とても詩的で、言葉を聞いても意味がすぐに分かるというものではなくて、不明瞭なところもある詩なのです。だから子供である彼女は、そこでまさに精神的なものに触れて目覚めていく、その過程で音楽という触媒に触れることで、スピリチュアルな状態を映し出すアナロジーとして機能するだろうと思ったのです。だからエレクトロニクス音楽を使ったのです。エレクトロニクス・ミュージックにはかなりのトリップ感、エクスタシー感、恍惚感がありますよね、そういうところで彼女が精神性に目覚めていく時の幻を見るような、幻影を見るような陶酔感を、このエレクトロニクス・ミュージックとメタル・ミュージックで表現できると思ったのです。

OIT:監督は普段から色々な音楽を積極的に探して聴いているのでしょうか?
ブリュノ・デュモン:音楽は大好きなんです。『ジャンヌ』の方では、クリストフというフランスの有名なシンガーを使っています。彼は本当にポピュラーな歌手で、謂わば歌謡曲の世界の人ですけれども、彼はこの作品でジャンヌの気持ち、感情に光を当てるような曲、メロディーを作ってくれたと思っています。ペギーのテキストにジャンヌの感情を齎してくれた。そうした人間的な部分がとても重要です。音楽を入れるところと入れないところもある。メリハリのきいた音楽の使い方をするということは、映画を作る上でとても大事なことだと思っています。


『ジャンヌ』リーズ・ルプラ・プリュドム
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