OUTSIDE IN TOKYO
Bruno Dumont Interview

ブリュノ・デュモン『ジャネット』『ジャンヌ』インタヴュー

4. 正直言ってこの映画はクレイジーな映画です

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『ジャネット』シャルル姉妹
OIT:俳優の話に戻りますが、『ジャネット』に登場する双子のシャルル姉妹(アリーヌ・シャルル、エリーズ・シャルル)が大変素晴らしかったのと、『ジャンヌ』に出てきたトマ・ド・クールセルを演じた、“大物の風格だ”と言われていた人物(Daniel Dienne)がとても魅力的でしたが、この二組の方々について教えていただけますか?
ブリュノ・デュモン:まず、双子の女の子ですけれども、この二人もリーズと同じでロケ地で見つけたのです。当初、あの役はそもそも一人で演じる役柄でしたが、あの双子姉妹があまりにも上手く歌うので、これを使わない手はない、二人一役にしようという考えをその場で思いつきました。それと、ジャネットの友人役で逆さに向いて歩く女の子が出てきますよね、ちょっとアクロバットな動きをする、あの子の動きも、その子が元々持っている天性の素質だったのです。私はそういう素人俳優の天性の資質というものを自分の作品で起用して生かすことがとても好きなんです。双子が素晴らしい歌を完璧に歌うわけですが、ジャネット(リーズ)はまだとても未熟な歌い方しか出来ない。それでも、あの双子の女性コーラスの見事さにジャネットが触発されて、成熟した歌い方に目覚めていく、そういう変化の生成を表現することが出来たと思います。
そしてトマ・ド・クールセル役についてですが、今回の陪審員のほとんどを大学教授や修道士の人達が演じています。知的レベルが高い大学の教養のある方々を起用したのは、ペギーの戯曲の台詞がとても難しいからです。このトマ・ド・クールセルを演じた人もフランス文学の教授です。なぜ難しいかというと、陪審員達は神学的な詭弁を弄するわけです。ですから、そうした神学的な複雑な構造になっている文章を、アクロバット的な台詞回しで語らなければならない、そうした芸当を出来る必要がありましたので、やはり素人と言えどもアカデミックな分野の人達を起用したのです。

OIT:今、最初の方の話に出てきた逆さに歩くジャネットの友達についてですが、あのシーンは『エクソシスト』(1973)へのオマージュかと思ったのですが、違うのでしょうか?
ブリュノ・デュモン:確かに、そういうファンタスティック映画であるとかホラー映画っていうのは、ちょっとギリギリの悪魔的な、グロテスクな人物が出てきますよね。ですからオマージュとは言わずとも、あなたの仰っていることは遠からずですね。私が思っているのは、ジェローム・ボッシュというフランドル派の画家をご存知でしょうか?ボッシュの絵も、ちょっと悪魔的なグロテスクな人々がいつも描かれている訳です。今回の作品でも、悪魔的な、ちょっとその辺にはいなさそうな人達を敢えて起用しています。

OIT:『エクソシスト』のついでに聞いてしまうのですが、三人の聖者、聖ミカエル、聖カタリナ、聖マルガリータが小川のシーンで出てきますけれども、彼女たちの振り付けの中にジョン・トラボルタ(『サタデー・ナト・フィーバー』(1977))へのオマージュがあったように思うのですが。
ブリュノ・デュモン:まさにその通りです。“ファンタジー”とフランス語で言うところの、“奔放な想像力”というものが今回の作品には入っています。ちょっと、えっ?と思うような意外性のある、突拍子もないっことを今回は敢えて入れているんです。ですから、ジャンルとしてはこの場面でディスコ的な振り付けは来ないだろうっていうところにディスコ風振り付けを入れてみたりしている。でもそれはどちらかというとIgorrrのエレクトロ・メタルの音楽が先にあったということがあります。Igorrrの音楽はまさに一つのジャンルに留まらない、色々なジャンルを網羅する音楽ですから。彼のその音楽を聴いてコレオグラファーのドゥクフレが、じゃあこういうのも入れてみようっていうような形であの振り付けになったのです。正直言ってこの映画はクレイジーな映画です。


『ジャネット』三聖人
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