OUTSIDE IN TOKYO
KALTRINA KRASNIQI INTERVIEW

河野知美『水いらずの星』インタヴュー

3. 自分の本質って実はそんなにパワフルな女性でもないし、繊細な部分も
 持ってるのになあって思いながら、でもそういう役はもらえないんだって思っていた

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OIT:この作品で初めて映画をプロデュースするという体験をされて、どうでしたか?
河野知美:先程のトピックスの話に戻るんですけど、広山詞葉さんと映画を撮りたいねって話になって、じゃあどんなことをやったら面白いかなってことを二人で探していたんです。その中で“精子バンク”というトピックに興味をもちました。問題、課題の多いトピックではありますが、少子高齢化が進む日本において精子バンクシステムがきちんと整備されて、きちんと運用出来るようになったら、妊娠が難しい方やシングルでも子供が欲しいという方にとって一つの光になるんじゃないかって、その当時思ったんです。それを広山さんと福宮さんに伝えたら、それは面白いっねってことになり、このトピックで映画を作ってくれる監督さんを探そうってことになりました。その中で驚くことに堤監督が「面白いね、私が撮るよ」と言ってくださり実現に至りました。精子バンクというトピックに閃きを感じ、原案を考えてくださり、すぐに脚本家の三浦有為子さんをご紹介してくださったという感じです。

OIT:今回の『水いらずの星』も主演とプロデュースをされているわけですが、この映画にはどういうことで関わることになったのですか?
河野知美:『truth~姦しき弔いの果て~』はコメディ、高橋洋監督作品『ザ・ミソジニー』(2022)はホラー。この異なるジャンル映画を製作することで、海外映画祭に出席させていただく機会をいただきました。その経験を経て自分の中で考えることがあったのです。今までももちろん日本人として日本映画を作っていたつもりだし、日本の社会的な問題を取り上げながら映画を製作してきたつもりではいたけど、改めて、日本人として日本映画を撮りたいと思ったのです。もう一つは、こういう外見なので、頂く役が結構キャラクターの立った役や変わった役が多くて。自分の本質って実はそんな女性でもないし、繊細な部分も持ってるのになあっと思いながら、でもそういう役はもらえないんだなぁと思っていました。そういう繊細な部分を表現出来る役が出来たらいいなあ、という事で越川監督に、こういう映画を作りたいと思っているとご相談しました。

OIT:松田さんの原作を見つけたのはどなたでしたか?
河野知美:越川監督です。私は監督の『海辺の生と死』(2017)が大好きだったのです。日本の土着的な世界観の中に日本人がどう生きてきたか、がきちんと描かれており、かつ俳優さんの演技に対しての演出も素晴らしいなと思っていました。あくまで私の中ではですが、越川監督は、海外の文化はもちろん、日本の文化も学んでそれを全て体の中に入れて、入れて、入れて、全部噛み砕いて新たな日本の文化に昇華することの出来る監督さんだと思っていて、それが私にとって大変魅力的でした。越川監督のつくる映画がもっと世界に日本映画として出て欲しいと思っていたんでしょうね。大体の予算をお伝えして、それを超えなければ、あとはお任せしますとお伝えしたかと思います。その後1年位監督は、河野知美を活かせる役は何か?とずっと考えてくださっていたと伺っています。

OIT:なるほど、そういう経緯でしたか。
河野知美:越川監督の“俳優河野知美”に対する愛情を実感したのは、ただ悲しい女の役とか、繊細な役ということではなくて、私がコンプレックスだと思っている外面も、表現したいと思っている内面もちゃんと成立させている役じゃないと意味がないと作品を探し続けてくださったことです。そしてその答えとして『水いらずの星』はどうだろう?ちょっと読んでみてとおっしゃいました。

OIT:それで『水いらずの星』をやるとなって、その後、越川監督が脚本を書き始められたのですか?
河野知美:“原作”と言ってもですね、ほとんど戯曲からセリフを削ってないんですよ。監督が書かれたのは、男と女が再会するまでのシーンまでです。

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