OUTSIDE IN TOKYO
MATSUBAYASHI YOJU INTERVIEW

松林要樹『オキナワ サントス』インタヴュー

6. 残っている映像が少な過ぎるから、
 まだ間に合うなら撮るべきだと思ってやりました

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OIT:しかし、今の日本の国会の中を見回してみても、こういうクオリティの方はちょっといらっしゃらないんじゃないかと思うんですけど。
松林要樹:そうですよね、全員右にならえみたいな感じですからね。
OIT:自民党の皆さんは、あんなトップでいいの?と問いたいわけですが、もうちょっとこの作品について聞かせてください。この知的ハイライトの場面を経て、映画は感情的なハイライトへと向かうと思います。最後に、比嘉さん、佐久間さんとサンパウロからサントスへの旅に向かわれる。中でも、比嘉さんは、今まで自分の感情を晒すことができなかった、心を開くことが出来なかったと仰っている。カメラが回っていて初めて喋れるようになった、そういう効能があったということですよね。
松林要樹:撮影がきっかけですよね。撮影で聞かれてるから答えてやってるんですよっていう気持ちはあったと思います。あの方の家に何回か撮影に行ってますし、県人会でも話を聞いて取材も、撮影もしています。多分、流れとしてちゃんと話を聞かせてもらったこと、自宅まで行って、駅に行って、流れを踏んでもらったことが本人の中でも思い出すきっかけになったんじゃないのかなと思います、自分の中でも考えてなかったことを。何か、一個一個、初めからじゃあ今回行ってくださいっていう風にならずに、何回か通ってるから、一連の流れみたいなことは知りつつも、でも実際突っ込んでなかったところを、次に行った時に聞くことが出来たり、(関係性が)上手くいったんだと思います、だからどんどん話してくれたのかな。
OIT:松林監督の作品だと『花と兵隊』の時も藤田松吉さんという方が登場されて、この方に話を聞くのは中々大変なことなんだろうと思いますけど、お墓の掃除とかをされて、話を聞くに至るわけですね。様々な状況の中で、そんなに自らの語る言葉を持っていない人達の言葉を記録に残すということを監督はやられていると思います。このことは、監督が映画を撮ることの一つの目的であったりしますか?
松林要樹:多分そうですよね、既に有名になってるところには行かなかったり、あんまり人がやってない方向に取材してきたと思います。今回も他の人が既にやっていたり、ある程度形になってるものがあれば、もうそれで良かったと思うんですよ。オルガさんのあの映像だけしか残ってないっていうのはちょっと違うよなっていうか、少な過ぎるから、まだ間に合うなら撮るべきだなっていうことを思ってやりました。
OIT:でも、この映画を見てると、日本を離れて大変な体験をされた方々だけれども、カメラに映っている表情とかを見ると、非常にいい顔されていて、生活も豊かな感じがします。
松林要樹:皆さんもうご隠居の年齢ですけれども、いい生活っていうか、ブラジル人みたいにのびのびとやってますよね。
OIT:そういうところが見ていていいなぁと思うと同時に、こちらの居住まいを正されるようなところがあって、面白く拝見しました。
松林要樹:ありがとうございます。どうやったらこれを色々な人に見てもらえるか頭が痛いんですけど。
OIT:コロナ禍のオリンピックで今、東京の方はカオスで、人々の不満はかなりのものがあります。東京であったり、日本であったり、豊かと思われている国の人達が実は精神的余裕がないっていう現実があると思います。『オキナワ サントス』を見ると、大変だと思ってた人達の方が実は豊かなんじゃないの?という感じすらありますから、是非多くの人に見て頂きたいですね。見れば必ず受け取るものがある映画だと思います。
松林要樹:本当になるべく多くの人に見てもらいたいです。

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