OUTSIDE IN TOKYO
VERENA PARAVEL & LUCIEN CASTAING-TAYLOR INTERVIEW

ヴェレナ・パラヴェル&ルーシァン・キャステーヌ=テイラー
『リヴァイアサン』インタヴュー

6. 世界は我々の理解できないところで常に変化している、
 存在のかたちや生命体は常に消え行くものだ

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OIT:マストの上から(俯瞰して)撮影しているショットもありますね。あれは思いつきですか?あっ、あそこに付けてみようって。もちろん、空間の制約もあるわけで。
VP:そう、(漁の)作業中のショットね。船上であまりに退屈して、何週間も閉じ込められていたらどうする?3週間もあそこにいたら何だって試してみたくなるの(笑)。
OIT:少なくない人と一緒に。
VP:そう、たくさんの人と。だからこの壁に登ってみようって(笑)。
LCT:即時的じゃないという意味では、普通の映画ならあのカットは最初に入ると思う。船全体が見渡せるから。すると物理的にも空間的にも関係性が理解できるから。
VP:自分がどこにいるかも。
LCT:そこからアップになれば、記憶の中で自分の場所が把握できる。でも僕らはずっと後にそれを入れた。だからバスタブ内の小さな玩具のように見える。それで距離が生まれる。とても高いところにあるから、小さな模型を見下ろすような、SF的な感じになる。そしてアップやカメラの動きが、不気味なトーンやオレンジやグリーンが加わるから、自分がまだどこにいるか把握できない状態になる。
OIT:あなたたちが映画を作る時、何かが死に絶えよう、消えようとするものに関係しているという意識はありますか?そこに興味があるのでしょうか。それともただの偶然?
VP:偶然だと思う。
LCT:君や世界や観客の方が、僕らよりもうまくその質問には答えられるだろう。映画作家は嘘をつくものだから。アーティストが嘘をつくように。嘘をつかないまでも、理解していないものを理解しているふりをする。でも映画は小説や様々な芸術のように、無意識、直感、または子供時代から生まれてくるものだ。そうしたつじつまの合わない、理解しづらい、瞬間から生まれ、自分のしていることが把握してるフリをしてるけど、それは自分の作品に応えるためにしているわけで、実際よりも意図的で理解可能なものを(つい)見せてしまうものだ。僕に言えるのは、文化人類学の中で、1960年代半ばに世界が消失するかのように表現することに風当たりが強くなるという風潮が生まれた。それは政治的にも問題を孕むことになる。みんなが、アメリカもヨーロッパも、第一世界の白人たちが過去50年間、その植民地へ行き、最後の未開人、最後の農民、最後の部族のリーダーが死に絶えてしまうと騒ぎ立て、それが西洋側が植民地主義、現代化、グローバリゼーションの原因となっており、それを作っている側が体制の一部となって土着文化を死に追いやる張本人になっていることを認識していない、などという世論が生まれた。今は全てがハイブリッド化し、新しく生まれるもの、混合主義と、新しいものになっている。でも実際のところ、世界は我々の理解できないところで常に変化している。存在のかたちや生命体は常に消え行くものだということ。新しく、混合主義的なものが生まれている。なので、それを認識しないのは近くしか見えていない気がする。消え行く生命体に注意を払わないことは、より大きな、歴史的視点や意識を否定しているような気がする。なので『SWEETGRASS』は、まあ、『FOREIGN PARTS』まで分からないけど、ある生き方があり、それが時代の潮流に逆らうもので、何らかの終わりに向かう世界を描く重要性を認識すること、つまりある瞬間の、そこに立ち戻ることの不可能さを表す。ある章の終わり、歴史の終わりのように。多くの人にそれが僕らのやっていることだと言われてきた。他に何か自分たちの気づいていない、より深い何かでもない限り。例えば『リヴァイアサン』を見ても、漁業が持続可能ではないことは分かる。今のままの漁業のやり方では。まあ、かつてもそうだったかもしれないし、この先もそうかもしれない。でも『リヴァイアサン』を見て、僕らの海洋資源への冒涜という比喩、世界中の全てのものを売り買いする暴力的な関係への比喩や、そこに押しつけられる如何なる比喩であっても、そう思うかもしれない。でもそれは救済的な文化人類学の意図的なかたちではなかった。それを見て、終わりを示すものではない。それもまた真実だ。僕らの他の映画が表しているのは、他の人たちが消失と言おうが、ただ消えるだけではない。そんなことでは全くないと思う。
OIT:それにただドキュメントしたいわけでもないですよね。
LCT:うん、全く。

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